不動産投資で節税は嘘?節税にならないカラクリと心構え

不動産投資で節税は嘘?節税にならないカラクリと心構え

不動産投資を通じて節税を図ることは一般的に行われている手法ですが、その一方で「不動産投資で節税は嘘だ」と言われることもあります。

本記事ではその理由を明らかにし、詳しく解説します。

本記事を読むことで、不動産投資における節税の真実が理解でき、自分の判断軸を持つ大切さを学んでいきましょう。

佐賀大学卒業
公共土木設計に10年、測量・登記・開発に16年、不動産実務に13年、相続・後見に11年。
保有資格は土地家屋調査士、測量士、2級建築士、宅地建物取引士、相続対策専門士など他多数。
実務実績は相続相談件数が2,000件、任意後見契約数が300件、不動産売買仲介数が350件など他多数の豊富な実績。
コラムは実務での実体験を交えてわかりやすく解説しています。

トータル50年の実務実績を活かし、現在は不動産で悩む人がいなくなるよう、正しい不動産の知識を広める活動をしています。

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    目次

    不動産投資でできる税金対策

    不動産投資でできる税金対策は、主に3つあります。

    • 所得税・住民税
    • 贈与税
    • 相続税

    本記事では、「所得税」と「相続税」の節税効果について考察していきます。

    所得税の節税

    所得税の節税方法は、さまざまですが減価償却費はそのうちの1つです。

    賃貸物件は、購入にかかった費用を減価償却として計上できる資産だからです。

    そのため、事業開始初年度〜数年は減価償却費を収入から差し引くことができ、課税所得がマイナスとなります。

    所得税が節税できるカラクリ

    減価償却費は、賃貸物件の建物部分の購入費を毎年分割して税務上の経費とすることができます。

    減価償却費は、実際にキャッシュとして出ていく経費ではないので、手元に残るキャッシュフローより申告所得が少なくなり、所得税が圧縮できる仕組みになっています。

    建物の種類耐用年数
    鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
    鉄筋コンクリート造(RC造)
    47年
    鉄骨造34年
    軽量鉄骨造19年
    木造22年
    建物の法定耐用年
    国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
    国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

    減価償却費は、表のとおり建物の種別・構造・築年数によって税務上定められた年数によって経費計上することができます。

    減価償却費は売却時に譲渡税として課税される

    事業所得、給与所得が多い方は、不動産事業で出たマイナス(主に減価償却費)を損益通算して所得税を減額させる効果がありますが、この物件を売却する時に、過去に計上した減価償却費を取得費から控除するため、最終的には譲渡税という形で課税されます。

    仮に、1000万円で購入した物件を5年後に1000万円で売却。減価償却費が300万円のとき、譲渡益は、次のとおりです。

    譲渡益 = 売却価格1000万円-取得費(購入価格1000万円-減価償却費300万円)

        = 300万円

    この譲渡益に対して、譲渡税率で課税されるため、結局、償却した金額については最終的に譲渡税として課税される仕組みとなっています。

    長期譲渡の場合は概略20%の税率となるため、個人所得の税率が20%を超える人にとってはその差分が節税といえそうですが、そうでない場合は、単に所得税を譲渡税に繰り延べただけとなります。

    「節税対策、節税対策」と言ってる割には、さほど節税対策として機能していない様な気がしますが如何でしょうか?

    もちろん、割引率という考えに基づき、早期に現金化してそれを再投資することによって資産拡大を図るというのであれば話は別ですが。

    不動産所得に計上可能な経費は?

    減価償却費以外には、不動産投資を行う上で経費として認められる費用があります。

    その他、不動産投資のランニングコストについては、下記の記事をご覧ください。

    相続税の節税

    不動産投資は、相続税の節税には最適です。なぜ節税になるのか詳しく見ていきましょう。

    相続税が節税できるカラクリ

    所得税については、税の繰延であり節税とは言いづらい部分がありますが、一方、相続税については、かなり節税効果は高いといえます。

    それは、不動産の評価方法にあります。

    1億円の現金の相続税評価額はもちろん1億円です。

    その1億円でアパートを買うと、場合によって、時価1億円の相続税評価額は半額以下になることも珍しくありません。

    不動産の評価については時価ではなく路線価(土地)と固定資産税評価(建物)になり、更には貸家建付地等の評価減、小規模宅地等の特例が使えるからです。

    例えば、時価1億円の不動産の評価額が5千万円だとしたら、圧縮率は50%となります。仮に税率が20%とすると、

    [現金1億円]1億円×20%=2000万円

    [時価1億円の賃貸アパート]5千万円×20%=1000万円

    と1000万円も節税効果があります。

    ここまでは、よくある節税スキームです。上記をまとめると次表のとおりになります。

    時価(実勢価格)1億円
    簿価(購入価格)1億円
    評価5千万円
    圧縮率50%
    節税額1千万円

    そしてここからが、世の中でよく見かける節税詐欺の仕組みです。

    時価(実勢価格)1億円
    簿価(購入価格)2億円
    評価5千万円
    圧縮率25%
    節税額3千万円

    [現金2億円]2億円×20%=4000万円

    [時価1億円の賃貸アパート]5千万円×20%=1000万円

    同じ時価1億円の物件を2億円で買ってしまうと、圧縮率と節税額が高まり、より節税効果が高いように見えます。

    当然、通常より1億円高く買っている訳なので、1億円損しているのですが、これが通常1億円なのか2億円なのか、多くの人はよくわかっていません。

    確かに節税額が2千万円増えますが、その前に1億円損していることは誰も教えてくれません。

    なぜなら、紹介している側の利益だから、わざわざそんなこと言いません。節税効果と圧縮率、このマジックに乗せられて、時価1億円の不動産を2億円で買う、こんな非現実的な事が不動産の世界では普通にそこら中に存在します。

    不動産投資で節税を失敗しない心構え

    税金の申告をする際に、税理士に相談するケースも多く見られますが、税理士にまともな顧問料も払ってないのに、過度な期待をし過ぎています。

    そもそも税理士は税金の申告が本業で不動産の時価に詳しいとは限りません。むしろ、詳しい税理士の方が珍しい。

    そこで、税理士は圧縮率と節税額の話はするが、時価は放置される。「効果があると税理士の先生が言うなら、やりましょう。」この流れになる。

    そして、銀行と不動産屋から勧められるがままに、サブリース契約をする。これでは資産形成とかけ離れた悲しい結果となってしまいます...

    悪いのは誰でしょうか?

    • 不動産屋ですか?
    • 税理士ですか?
    • 銀行ですか?

    不動産屋は安く仕入れて、高く売る。これが仕事です。

    時価1億円のものを2億円で売ったのだから、いい仕事したと社内で褒められることはあっても怒られることはありません。会社にかなり貢献しているといえます。

    では、税理士でしょうか?

    税理士は、2億円で買った不動産の評価は5千万円になって圧縮率25%です。と計算結果を伝えただけです。何も悪くありません。

    銀行ですか?

    銀行は、あなたの与信と購入する不動産の担保評価を見て貸しただけです。もしかしたら、追加担保とかとられていませんか?

    お金を貸せる人に貸す。これが銀行員の仕事です。取引金額が大きければ大きいほど、銀行員にとってはいい仕事をしたと言えるでしょう。

    そうです。悪い人などいないのです。

    もし、「騙された」と感じる様でしたら、騙された人が悪いのでしょう。

    そうならないために、「自分の判断軸」が体系的に身につけられる、不動産実務検定を受講されてみては如何でしょうか?

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