相続によって自宅が空き家になったら、どうしますか?
- 住む(使う)
- 売る
- 貸す(賃貸・民泊)
- 何もしない
- 引き取ってもらう
今までなら、①~④のどれかだったと思います。
人口が増える局面のときは誰かが住むことが多かったのが、今では人口は減少局面となっており、誰も住まなくなって放置されている空き家が増えています。
日本全国で増加傾向にある空き家問題は、相続をめぐるさまざまな問題を引き起こしています。
本記事では、空き家と相続放棄、固定資産税などの税金問題、また空き家による地域の問題など、専門家のアドバイスを交えながら疑問に答えます。
空き家の管理義務や、税金の特例、相続が原因で家族が直面する可能性のあるトラブルを未然に防ぐ方法を検討します。
また、空き家として放置することのデメリットや、売却・活用方法についても掘り下げます。
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空き家の現状
日本全国で増加し続ける空き家問題は、多くの自治体や地域社会にとって頭痛の種となっています。
住宅・土地統計調査(総務省)によると、空き家の総数は、20年間で約1.5倍も増加しています。(576万戸→849万戸)
放置された空き家は、街の景観を損ねるだけでなく、様々な社会問題を引き起こす原因ともなっています。
特に高齢化社会を迎え、これからの空き家の数はさらに増加すると予想されます。
空き家が放置される理由
空き家が増え続ける背景には、高齢化に伴う持ち主の死亡や健康問題、相続放棄による所有権の不明確化などがあります。
また、遠方に住む相続人が管理を行うことが困難であったり、相続によって複数の共有者が発生し、意思決定が難しくなるケースも少なくありません。
- 解体費用をかけたくない
- 家財・荷物を片付けられない
- 将来親族が使うかもしれない
相続が発生した際には遺産分割協議が必要ですが、これがスムーズに進まないことも空き家問題を深刻化させています。
さらに、固定資産税や維持管理にかかる費用を考慮すると、空き家を売却しようにも市場に出すタイミングを見計らうことが難しいという事情も存在します。
空き家を放置するリスク
空き家を放置しておくことには多くのリスクが伴います。
- 倒壊
- 外壁落下
- ねずみ・害虫など
- 景観の悪化
- 悪臭
- 不法侵入
- 枝のはみだし
まず、建物の劣化は避けられないため、倒壊の危険性が高まります。
これにより近隣住民への安全リスクが発生するだけでなく、財産価値も自然と低下していきます。
さらに、放置された空き家は不法投棄の場所や犯罪の温床になる可能性があり、地域の安全性が低下することも懸念されます。
税法の改正により、特定の空き家には高額な固定資産税が課されることもあり、経済的な負担が増加することで、所有者の経済状況をさらに圧迫することになります。
空き家問題に対処するためにも、相続や空き家の活用法に関する正しい知識と対策が求められます。
相続した空き家を放置すると税金はどうなる?
2023年12月13日より、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)が一部改正となりました。
この法改正によって、特定空家に加えて管理不全空家も市区町村からの指導・勧告の対象となりました。
管理不全空家とは
窓や壁が破損しているなど、管理が不十分な状態
特定空家とは
そのまま放置すると倒壊等の恐れがある状態
そして、指導を受けて、それに従わずに勧告を受けると固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。
種類 | 小規模住宅用地(200㎡以下) | 一般住宅用地(200㎡超) |
---|---|---|
固定資産税 | 課税標準の6分の1に減額 | 課税標準の3分の1に減額 |
都市計画税 | 課税標準の3分の1に減額 | 課税標準の3分の2に減額 |
上記の軽減措置が受けられなくなるので、実質の税負担が増えます。
詳しくは国土交通省の関連情報をご覧ください。
相続放棄をしても空き家の管理義務は残る場合があります
相続放棄をすると、管理もしなくて良くて楽だと考える方が多いでしょう。
2023年4月に施行された改正民法により、空き家の管理義務の責任者が明確になりました。
相続の放棄をした者による管理
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
民法 第940条
例として、被相続人の自宅に暮らしている人は、「現に占有」していると言えるため、相続放棄後も管理しなければなりません。
一方で遠方の家族の場合で、その家の手入れに全く関わっていなければ、管理義務はありません。
空き家問題への対策メリットとデメリット
では相続した空き家を放置しないためにどんな対策があるのでしょうか。
それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
住む・使う | ①家系が守れる一番いい形 | ①遺産分割が難しくなるケースもある |
売る | ①手放せる ②お金が得られる ③税制のメリットを得られる場合がある | ①売却の手続きが大変 ②家系が途絶える |
貸す(賃貸・民泊) | ①収益が得られる ②賃貸したまま売却も可能 | ①管理が必要 ②リフォームが必要になる場合がある ③建替えが難しくなる |
何もしない | ①手間がかからない(今は) | ①建物の老朽化が早い ②固定資産税を払い続ける ③特定空き家に指定されると固定資産税が6倍 ④相続登記義務化 ⑤問題を先送りすることによって事態は深刻化する |
引き取ってもらう | ①手放せる | ①お金がかかる |
何もしないのはデメリットしかありません。所有権は放棄できません。
唯一、相続放棄という方法もありますが、その他の財産も全て放棄することになります。
もし、利用する予定のない実家がある場合には早期に対策が必要です。
①住む(使う)
そのままの状態で使えるのであれば費用対効果は高くなりますし、家系も守れますので最も良い選択肢です。
ただし、次の跡継ぎ問題も残ります。
また、遺産分割で自宅が財産のメインの場合、分割に苦慮する場合もあるので自宅の承継については、早めに家族会議を行うようにしましょう。
②売る
都心の高く売れる土地はそんなに心配ありませんが、田舎で需要がないような場所だと売却するのも難しくなります。
ご自身の地域がどのような売買実績があるのか事前に確認しましょう。
また、売却益の見込める物件の場合には、物件の種類や売却のタイミングによって、居住用3000万円控除や空家特例による3000万円控除など譲渡税の特例が使える可能性がありますので事前に専門家に相談しましょう。
③貸す
その地域の賃貸需要にもよりますが、多少手直しをして貸すという方法もあります。
手放すわけではないので家系も守れますし、うまく行けば賃料収入も得られます。
ただし、リフォームしてお金かけて募集したが客がつかない、なんてことにならないように賃料設定含めて事前のマーケティングが肝になります。
賃貸で客付けができれば保有して家賃収入を得てもいいし、そのまま投資商品として売却することもできます。
また、観光地や古民家などの場合、民泊として運営することも検討できます。
④引き取ってもらう
令和5年4月から相続土地国庫帰属制度が始まりました。
所有者不明土地を減らすために出来た制度ではありますが、引取のための要件が物納並みに厳しく、なかなか実用的でないという意見も多くあります。
そのような中、民間事業者が引き取るサービスが出てきました。
今まで、不動産と言えば、お金をもらって売り渡すのが普通だったのが、お金を払って引き取ってもらうという時代になっています。
放置すると、末代まで固定資産税や相続手続き費用の負担が続くので今のうちに損切するという考え方です。
不動産の価値と価格の考え方
旧来、日本の不動産価格は積算価格の考え方が根強く、モノには一定の価値があるものと思われていました。
バブルの時には土地は絶対に値下がりしないモノとおもわれていたほどです。
しかしながら、実際には、利用しない土地に価値は見い出せず、今では「5,000万円で買った別荘がお金をもらっても要らない」というようなこともよく耳にします。
もし、仮にその別荘が毎月100万円の収益を産むとしたら、誰か欲しい人はいるかもしれません。
誰も欲しくない、または利用価値のない不動産に価格がつかなくなってきたのです。
日本は今後も少子化による人口減少は進んでいきます。
不動産の価格は、旧来の積算価格という考え方から、どれくらい価値があるのかという収益還元の考え方に変わって来ています。
自宅の承継も相続対策の一つです。相続対策はご家族全員で早期に取り組むことが成功への道です。
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