2023年時点における民間賃貸住宅の有償管理戸数は約1010万戸と推計されており、これは民間賃貸住宅数の約半分を占めています。
そして、この有償管理戸数のうち44%をサブリースが占めています。
要するに賃貸戸数の半分は自主管理、約4分の1が管理委託、約4分の1がサブリースということになります。なぜ、これほどまでにサブリースは重宝されてきたのか?
そのメリットとデメリットの核心に迫ります。
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ハウスメーカーとは?
- 積水ハウス
- セキスイハイム
- 住友林業
- ダイワハウス
- へーベルハウス
- ミサワホーム
など住宅の設定・施工・販売を行う会社です。CMや広告で一度は上記の名前を聞いたり、目にしたことはあるのではないでしょうか。
土地活用専門のハウスメーカー
- 大東建託
- レオパレス
- 東建コーポレーション
- 生和コーポレーション
などは、土地活用の手法として、アパート建築を斡旋しています。
管理が面倒な地主に対して、建築した建物を自社で一括で借り上げるという仕組みを作りました。
これが一括借上げと呼ばれています。
- 建築費
- 管理費
上記の2軸で利益を上げています。
不動産賃貸経営の目的
不動産賃貸経営は、地主と一般投資家で目的が違うことをご存知でしょうか。一度整理してみましょう。
以前は、土地を持っている地主だけが行っていた賃貸経営でしたが、 近年、ワンルーム投資やサラリーマン大家の普及などにより、土地を持っていない人が不動産投資の市場に参入するようになりました。
地主の不動産投資とそれ以外の不動産投資で大きく異なるのは、その目的です。
地主の不動産投資の目的
地主は、代々受け継いできた土地を守らなければならないという義務感がある場合が多いです。
土地は更地価格が最も固定資産税も相続税も高くなるため、何か運用しないと収支が合わなくなり、相続が発生すると相続税の支払いのために土地を売却するケースも多くみられます。
そのため、資産を防衛するために土地活用せざるを得ない状況にあるとも言えます。
特徴としては、所有地での活用であり、場所は既に特定されている状態である。
主に、このような地主の相続税対策のための土地活用のサービスで多くのシェアを取っているのがハウスメーカーです。
一般投資家の不動産投資の目的
一般投資家は、土地を買って建物を建てて運用する場合もあれば、既に運営されている土地・建物を取得する場合もあります。
目的としては、不動産収入の獲得や銀行融資を利用した資産形成、土地の評価減を利用した相続税対策などがあります。
物件の場所を含め、用途など自分で選べるのが特徴ですが、土地も一緒に購入するため、比較的高額になります。 目的も多様ですが、基本的には収益性を求める傾向が強いといえます。
積極的に運用しようとする人は経営的な判断もできる人が多いと思いますが、そうではなく、やむを得ず、賃貸経営をしている場合、経営的判断ができないまま賃貸経営をしなければなりません。
そんなときにハウスメーカーが勧めてくるのが「サブリース」という手法です。
地主の中にも、もちろん経営的判断を積極的に発揮して上手く土地活用している方もいらっしゃいますが、多くの地主はハウスメーカーにサブリースという形で丸投げしています。
ちなみに、一般投資家でワンルームマンション投資以外でサブリースを利用している人はほとんどいません。
サブリース契約のメリットとデメリット
サブリースのメリットとデメリットをオーナーと業者それぞれの立場からみると次のようになります。
オーナー | 業者 | |
---|---|---|
サブリース契約のメリット | 空室損が確定する 銀行融資が受けやすい | 契約解除権を業者が持っているので、自らの意のままに賃貸管理業が永続できる。 |
サブリース契約のデメリット | 契約解除できない 空室損が大きくなる 売却時の価格が下がる | 無 |
メリット1:金融機関の融資は受けやすい
空室損が確定するものの安定した収支計画が立つため、金融機関からの融資は受けやすくなります。
地主であれば、建築用地に抵当権をつけられるため、土地から買うよりも自己資金の支出が少なく済むためプラスの収支計画を組むことも可能です。
また、建築用地以外の土地も担保提供することにより、自己資金をほぼ0にすることもできます。
デメリット1:途中で契約解約できない
サブリースの建付けとして、地主が貸主、サブリース会社が借主のマスターリース契約を締結しているため、借地借家法で借主であるサブリース会社が保護される形になっています。
契約解除の際には、借主(サブリース会社)からの解除は当然にできるものの、貸主(地主)から解除するためには、正当事由が必要となっています。
正当事由といってもそれを立証できるケースはまれで、仮に合意することができたとしても多額の立退料を支払うケースがほとんどです。
デメリット2:空室損が大きくなる
サブリースは空室損を確定させる契約です。
仮に保証賃料が90%の場合、管理費が5%とすれば、空室損が5%となります。
これは、見方によってはメリットでもありますが、空室リスクが軽減された差別化された物件の場合デメリットにもなり得ます。
理論上の空室損は5%としても何年も満室稼働する場合には、実際の空室損は0%なのですから。
デメリット3:売却時の価格が下がる
収益不動産の価格は、基本的には収益還元法によって決まります。
サブリース物件の場合、サブリース賃料(生賃料)とマスターリース賃料(保証賃料)との間に10%のギャップがあります。
例えば、年間の生賃料が500万円の物件の場合、保証賃料は450万円になります。
利回りでその価格を見ると次のとおりになります。
通常 | サブリース | 差額 | |
---|---|---|---|
利回り5% | 10,000万円 | 9,000万円 | 1,000万円 |
利回り6% | 8,333万円 | 7,500万円 | 833万円 |
利回り7% | 7,142万円 | 6,428万円 | 714万円 |
サブリース契約があることによって、売価に大きな差が出ることが分かります。
もちろん、売却を理由に契約を解除することはできませんので、利回りが低い状態で売るか、うまくいったとしても、多額の立退料を支払って売却するかの2択となります。
サブリース契約の普及率
2023年時点における民間賃貸住宅の有償管理戸数は約1010万戸と推計されており、これは民間賃貸住宅数の約半分を占めています。

そして、この有償管理戸数のうち44%をサブリースが占めています。

ハウスメーカーの管理戸数ランキング
2024年の管理戸数ランキングとマスターリースの割合は次の通りです。
大東建託・大和リビング・レオパレス・旭化成の大手4社については、その管理戸数のほとんどがサブリースとなっています。
順位 | 会社名 | 戸数 | マスターリース戸数 | マスターリース率 |
---|---|---|---|---|
1位 | 大東建託グループ | 126万1,104戸 | 124万2,156戸 | 98.5% |
2位 | 積水ハウスグループ | 70万8,464戸 | 非公表 | - |
3位 | 大和リビング | 65万9,148戸 | 60万6,159戸 | 92.0% |
4位 | レオパレス21 | 55万4,373戸 | 55万1,038戸 | 99.4% |
5位 | 東建コーポレーション | 28万7,060戸 | 26万327戸 | 9.2% |
6位 | ハウスメイトグループ | 24万9,964戸 | 11万4,943戸 | 46.0% |
7位 | 東急住宅リース | 13万8,106戸 | 2万9,386戸 | 21.3% |
8位 | スターツアメニティー | 12万4,449戸 | 2万1,451戸 | 17.2% |
9位 | 旭化成不動産レジデンス | 12万1,465戸 | 11万1,355戸 | 91.7% |
10位 | リロパートナーズ | 11万8,468戸 | 非公表 | - |
「マスターリース」とは?
一括借り上げを意味し、オーナーとサブリース会社の間で締結される賃貸借契約のことをいいます。
「サブリース」とは?
転貸を意味し、サブリース会社と入居者との間で締結される賃貸借契約のことをいいます。
マスターリース賃料
管理費込みで、満室想定賃料の90%~80%が一般的です。
一般的な管理委託の場合は、管理委託費は賃料の5%が相場なので、仮にマスターリース賃料が85%の場合は、空室率10%を確定させることと同義となります。
ここで気を付けたいのは、サブリース会社と管理会社が別になっている場合、マスターリース賃料85%でさらに別途管理費5%とされているケースも見られます。
さすがに大手ハウスメーカーでは管理費込みの設定ですが、そうでない場合は注意してください。
ハウスメーカー物件のメリットとデメリット
土地活用は何十年にもわたって継続するものなので、信頼性の高いハウスメーカーに依頼するケースが多くなっています。
ハウスメーカー物件のメリットとデメリットをオーナーと業者それぞれの立場からみると次のようになります。
オーナー | 業者 | |
---|---|---|
ハウスメーカー物件のメリット | 安心感がある ブランド力があり差別化ができる 提携融資が受けられる 耐久性が高い サービスがきめ細かい ワンストップ 住宅展示場がキレイ | 建築費が高い リフォーム資材がメーカー指定品 |
ハウスメーカー物件のデメリット | 建築費が高い リフォーム資材がメーカー指定品 同ブランドとの差別化ができない | 無 |
ハウスメーカーでのアパート建築の一番のデメリットは建築費です。ハウスメーカーの品質については、非の打ちどころがないほど洗練されています。
しかしながら、賃貸住宅にそこまでの品質が必要でしょうか。
もちろん、土地が守れればトータルの収支はゼロでいいと割り切っているオーナーは手間がかからないしっかりとした建物を建てて良いと思いますが、 もし収益性を考えるのであれば、明らかに別の方法を選ぶはずです
なぜなら、一般の投資家のほとんどはハウスメーカーで建築をしないですし、サブリースもほとんどしません。
ただし、賃貸経営は、不動産や建築の高度な知識を持っていないと業者に反論することは難しいでしょう。業者が「現場ではこうだ」と言って、反論できる人はどれくらいいるでしょうか。
オーナーが、専門の技術者や凄腕の営業マンと同等以上の知識やスキルをつけることの方が難しいのが実態としてあります。
地主の土地活用の場合、土地はもともとあるので、土地代の支払いがない分、建物代が高くても多少の利益は出せますし、土地を担保にお金を借りるので自己資金の持出しも少なくて済みます。
その分、建築費が高くても収支がプラスになるため、ハウスメーカー×サブリースがここまで普及したのでしょう。
賃貸物件の差別化と空室率
ハウスメーカーのブランド力と品質での差別化した物件だからこそ、空室率は低くなるのではないでしょうか。
よく考えてみて下さい。それだけの費用をかけて差別化できるほど品質の高い建物を建てたのだから、空室率は下がって然るべきでしょう。
だとすると、空室率を10%で確定させるのは損失でしかないと思います
仮に90%のマスターリース賃料(管理費込)の場合でも5%は標準の空室率だから何もサブリースにする必要はないのではないでしょうか。
サブリース契約にするメリットは前述したとおり、業者に解除権というメリットがあり、オーナーには何のメリットもありません。
もし仮に空室が続くようなら、管理会社を代えれば済む話です。
解除権が業者にあるという異様な状況にあるという認識は持つようにしましょう。
サブリース以外の方法
管理会社に管理委託すれば、普通はちゃんとやってくれますが、たまに空室を放置したり、原状回復を過剰にやったりする業者もいますので、少々不安ですよね。
サブリースにすると解除権が業者に行ってしまいますが、同様なサービスとしては信託があります。
スターツ信託など、不動産の企画・運営・管理を一通りやってもらえるサービスがあり、借地借家法ではなく信託法での契約となるため、解除権の問題もなく全て任せることが可能です。
詳しくは不動産の信託(商事信託)のコラムをご覧ください。

業者と対等に渡り合うためには
賃貸経営において、オーナーが、専門の技術者や凄腕の営業マンと同等以上の知識やスキルをつけるためには、 体系的に実務の勉強をする必要があります。
楽して儲かる世の中ではありません。
また、管理会社や不動産業者など質の高い業者とのコミュニティを持つことも重要です。
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OKB勉強会
J-REC(日本不動産コミュニティー)公認の不動産投資勉強会
YouTuber大家、賃貸管理のプロ、不動産オタクの凄腕プロ3人が実務の裏話を教えます。

税理士、弁護士等の士業を始め、不動産のプロも多数受講者として参加しています。
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