信託には「民事信託(家族信託)」と「商事信託」の2種類が存在します。
本記事では、「商事信託」について解説していきます。
相続対策をこれから検討する方や既に検討される方は、一度は聞いたことある用語ではないでしょうか?
商事信託は、多くの方が抱える「相続」と「資産管理」の課題を解決するための手法として注目されています。
また信託を活用した財産管理は認知症対策としても有効です。
一般的な信託の仕組みを理解した上で、商事信託の特性を詳しく解説します。さらに不動産の活用としてサブリース契約が有名ですが、サブリース契約を結ぶより商事信託を活用する方がおすすめです。その理由も一緒に解説していきます。
専門家に任せることで、安心して財産を管理できる一方で、信託報酬や柔軟性の欠如といったデメリットも存在します。
それでは、商事信託の魅力や注意点、そしてそれがどのようなケースで特に有効であるのか、一緒に探ってみましょう。
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商事信託とは?
商事信託は、具体的には不動産を信託という枠組みを用いて管理・運用する手法のことです。
不動産をより効率よく運用したいが管理が難しいと感じる方や、相続税を最小限に抑えたいと考える方にとって、有効な相続対策として注目されています。
商事信託を活用すると、財産を信託先に預け、運用は信託会社が行うことで、運用の手間を省きながら資産の価値を維持・向上させることができます。相続対策を検討中の50代や60代の方にとって、特に魅力的な選択肢となります。
信託とは?
信託とは、自分の大切な資産を他人に託して、その資産を管理または運用してもらう仕組みです。
しん‐たく【信託】
信用して任せること。
他人の部分が誰かによって、商事信託なのか家族信託なのかが代わってきます。
信託では、三者の役割が明確になっています。
委託者 | 不動産を保有しているオーナー |
---|---|
受託者 | オーナーから委託を受ける家族や企業 |
受益者 | 信託された財産から生じた利益を受け取る人 |
受託者の部分が、会社であれば商事信託。家族や人であれば家族信託と一般的に呼ばれています。その他の関係性は同じです。
商事信託と家族信託との違い
「商事信託」と「民事信託(家族信託)」では、受託者や信託可能な財産など、異なる点があります。
商事信託は不動産の管理委託も可能です
2001年(平成13年)4月の「資産流動化法」改正により、金融機関や企業の財務体質の改善や資金調達の方法として、債権や不動産を流動化する「資産流動化信託(金銭債権の信託、不動産の信託)」の活用が推進されることとなりました。
不動産信託については、スターツ信託等の信託会社がサービスを提供しており、不動産オーナーに代わって、土地や建物の管理・運営を依頼できます。
不動産の管理を第三者に任せることで、手間をかけずに安定した収益を得ることができます。
相続対策としても、不動産の所有権を信託に移すことで、紛争の予防や資産のスムーズな移行を実現できます。特に不動産投資を検討中の方には、資産の有効活用の選択肢として理解を深めておくと良いでしょう。
商事信託とサブリース契約の違い
商事信託とサブリース契約の違いは、物件管理の責任範囲や収益の受け取り方法にあります。
商事信託では、資産の管理を信託会社に任せつつも所有権や決定権は委託者に残されます。一方でサブリース契約は、不動産会社が一定の賃料を保証し、物件を借り上げて他の入居者に貸し出す方法です。
収益の安定化を図るには、それぞれ異なる利点があります。
どちらを選択すべきか?
選択のポイントは、どの程度自分で管理を行いたいか、またリスクをどの程度受け入れられるかです。
商事信託は、所有権を持ちながらも専門家に管理を託せるため、長期的な資産形成に適しています。
一方でサブリースは、毎月の収入が安定する可能性が高いものの、賃料減額のリスクも伴います。
土地の活用を目的とした、不動産投資を始める50代〜60代の方にとっては、老後の安定収入を求めるならサブリース、相続対策や資産の増加を重視するなら商事信託が向いているかもしれません。
しかし、サブリースの場合は契約の縛りやデメリットが非常に多くトラブル事例が多発しています。ランニングコストの観点から見ても、商事信託とサブリース契約に大きな差はないため、特別理由がない限りは商事信託をおすすめします。
商事信託のメリットとデメリット
商事信託のメリットとデメリットをそれぞれ2つずつ紹介していきます。
商事信託を活用することで、不動産の管理を一任でき、効率的な資産運用が可能になるのです。
メリット1 専門家に任せられる
プロに不動産の管理を一任できることが大きなメリットです。これによって安心して資産運用できますし、不動産投資の学習に時間が取れない人や遠方に住んでいる場合でも可能になります。
メリット2 おひとり様向け相続としても活用できる
商事信託は受託者になれる家族や親族がいない場合でも、信託会社に依頼できるので、おひとり様向けの相続対策としても活用できます。
メリット3 契約の縛りがない
商事信託の契約はサブリース契約に比べて縛りが少なく、オーナーの意向に沿った運用が可能です。
契約内容もオーダーメイドで調整できるため、相続人間での揉め事を抑える手段としても注目されています。
ただし、全てが自由というわけではなく、信託会社との信頼関係や手数料の設定も重要なポイントです。
不動産の管理を第三者に委託する際には、自らの目的を明確にすることが大切です。
デメリット1 財産管理の柔軟性がない
財産範囲の違いでも説明した通り、利用制限や最低預入金額が決められていたりします。
条件は事業者で異なりますので、検討される場合は確認をおすすめします。
デメリット2 信託報酬の費用が発生する
信託会社に依頼する以上、信託報酬が別途費用として、発生します。しかし、その分を上回る上記のメリットがあります。
信託会社によって、費用は異なるため、契約する場合は十分に理解した上で行いましょう。
初期費用 | 数十万円以上 |
---|---|
信託報酬、管理費用、各種手数料 | 数万円ほど/毎月 |
商事信託が向いているケースは?
商事信託のメリットとデメリットを紹介しましたが、向いているケースはどのような場合でしょうか。
- サブリース契約に不信感がある
- 家族に受託者になれる人がいない
- 家族に事務手続きを負担させたくない
サブリース契約に不信感がある
- 誰かに不動産の運営を任せたいけど、サブリース契約に不信感がある
- 家賃の下落や空室率10%で確定されるのは納得がいかない
- 満室なら満室賃料を満額で欲しい...
サブリース契約ではこういったデメリットがありますが、商事信託ではこのようなことはありません。
誰かに不動産の運営・管理を任せたいという方は、商事信託であれば、サブリース契約が抱えるデメリットは一才なく利用することができます。
家族に受託者になれる人がいない
家族の中に受託者として信頼できる人がいない場合、商事信託は特に効果的です。
この場合、信託会社に依頼することで、安心して資産管理を任せることができます。これにより、相続税の対応や不動産の管理を円滑に進めることができ、大切な資産を次世代にスムーズに引き継ぐことが可能になります。
家族に事務手続きを負担させたくない
家族に余計な事務手続きの負担をかけたくないと思う方にとって、商事信託は理想的な選択肢です。
専門の受託者が手続き全般をサポートしてくれるため、家族は複雑な事務作業から解放されます。資産管理がスムーズに行えることで、家族全員の安心を確保することができるでしょう。
サブリースをするくらいなら商事信託一択
商事信託は、提供される柔軟な選択肢と専門知識を駆使して、相続対策や資産管理を効率化する方法です。
サブリース契約は契約の縛りやデメリットが多いため、誰かに不動産の運営・管理を任せたい場合は商事信託の方が安心・安全に建物を守ることができます。
また、信託の選択は、家族の事務負担を軽くし、自分の意思に基づいた資産管理を行いたい人に適しています。信託報酬が気になるかもしれませんが、それ以上のメリットが得られる場合も少なくありません。
このように、商事信託は、相続対策を考えている50代から60代の方々にとって理解しやすく、実践的な選択肢となります。信託制度をうまく活用して、安心・安全に次世代へ引き継いでいきましょう。
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