【2023年6月最新】「総則6項」最高裁の判例で解るタワマン節税のあり方

「総則6項」最高裁の判例で解るタワマン節税のあり方

2022年4月に最高裁で判決が確定し、タワマン節税を試みた相続人らが敗訴しました。

最高裁の判決によって、タワマン節税が許される事例と否定される事例がより具体的になりましたので、今回は判例のポイントとタワマン節税の今後の有効性について解説します。

2023年6月に国税庁による有識者会議が行われ、タワマン節税が事実上改悪の流れとなりました。

タワマン節税を検討している人は是非とも参考にしてみてください。

この記事でわかること

佐賀大学卒業
公共土木設計に10年、測量・登記・開発に16年、不動産実務に13年、相続・後見に11年。
保有資格は土地家屋調査士、測量士、2級建築士、宅地建物取引士、相続対策専門士など他多数。
実務実績は相続相談件数が2,000件、任意後見契約数が300件、不動産売買仲介数が350件など他多数の豊富な実績。
コラムは実務での実体験を交えてわかりやすく解説しています。

トータル50年の実務実績を活かし、現在は不動産で悩む人がいなくなるよう、正しい不動産の知識を広める活動をしています。

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    目次

    タワマン節税の仕組み

    タワマン裁判の内容に触れる前提として、タワーマンションの購入を利用した節税、いわゆるタワマン節税の仕組みを解説します。

    タワマン節税とは?

    タワマン節税とはタワーマンションを購入し、手持ちの財産の評価額を下げることで、相続税を安く済ませる方法です。

    税金の世界では、財産の評価額が低ければ低いほど課税される相続税も低くなります。それゆえ現金でマンションを購入し、財産の評価額を下げる相続税対策が富裕層のあいだで流行しました。

    なぜマンションを購入すると財産の評価額が下がるのか?

    相続税の世界では、現金を不動産に変えると相続税評価額が下がるのが一般的です。現金と違って、不動産は時価と異なる基準で評価されるからです。

    1,000万円の現金は1,000万円の財産評価になります。しかし1,000万円の現金で不動産を購入すると、相続税評価額は1,000万円よりも低い金額になるのです。

    なお、相続税評価額は相続税を算出する際の基準となる価格を意味します。

    相続税評価額
    現金1,000万円1,000万円(=時価)
    1,000万円の価値のある不動産1,000万円よりも低い金額
    現金と不動産ごとの相続税評価額

    *相続税評価額は相続税を算出する際の基準となる価格

    *相続税評価額が低くなるほど相続税も少なくなる

    国税庁が定めた基準(財産評価基本通達)によると、建物の相続税評価額は固定資産税評価額を基準にして、土地の相続税評価額は路線価を基準にして評価額が決まります。

    時価は市場での取引価格(不動産を売却すれば得られる金額)で、固定資産税評価額は時価の70%、路線価は時価の80%が目安です。

    財産の種類財産の種類財産の種類
    現金の評価額時価時価の100%
    建物の評価額固定資産税評価額時価の30%OFF
    土地の評価額路線価時価の20%OFF
    財産評価基本通達による相続税評価額の算出方法

    *時価とは市場で取引される場合の価格

    時価とは異なる基準で財産の価値が評価されることによって、建物、土地、いずれについても実際に取引される価値よりも低く見積もられるのです。

    相続税評価額が下がれば、相続税も下がります。

    時価と相続税評価額の差を利用したのが、マンションの購入を利用した節税の仕組みです。

    国が公表している通達に沿って財産を評価しますので、マンション購入による節税の仕組み自体は違法なものではありません。

    タワーマンションはより節税効果が高い

    不動産の購入を利用した節税は、タワーマンションの購入でよりいっそう節税効果が高くなると言われています。

    その理由は主に2つあります。

    • 土地の相続税評価額は、部屋ごとの専有面積に基づいて割り算させるため。
    • タワーマンションは、高層階ほど高値で取引されるため。

    普通の不動産とは異なり、マンションの場合は、各部屋の専有面積に基づいて土地の相続税評価額が「割り算」されます。特にタワーマンションの場合、土地面積あたりの総戸数が多いため、土地の相続税評価額と時価との差が大きくなります。

    また、タワーマンションは高層階ほど高値で取引されることが一般的であり、高層階になるほど相続税評価額との差が広がります。

    そのため、高額な物件を購入すると、相続税評価額は低く抑えられることが多いため、「タワーマンションの高層階を購入する」ことが相続税対策として最も節税効果が高い方法となります。

    タワマン裁判とはなにか?

    タワマン裁判とは、最高裁によって「総則6項」が適用された裁判です。

    タワマン裁判の影響で、タワマン節税の有効性が議論がされるようになりました。

    財産評価基本通達6項(総則6項)とは

    総則6項とは財産評価基本通達第1章総則6項の略称で、条文は以下の通りです。

    この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

    引用元:国税庁

    つまり「著しく不適当」と判断される場合は、通常と異なる評価方法によって相続税評価額が決まるという内容です。

    総則6項は行き過ぎた相続税対策を許さないために設けられた規定と言われます。しかし「著しく不適当」とあるように、総則6項は基準が曖昧で恣意的に運用される危険があります。

    そのため総則6項は「伝家の宝刀」「ウルトラC」などとも表現され、むやみやたらに適用されないものと考えられていたのです。

    しかしタワマン裁判ではウルトラCであるはずの総則6項が適用されました。

    判例の経緯

    タワマン裁判で総則6項を適用した判例が出されるまでに至った事件の流れを解説します。

    裁判所のホームページから経緯を見ることはできます。

    <全体の流れ>

    STEP
    自己資金と銀行からの借金で、当時91歳のAさんが13億8,700万円のマンションを購入
    STEP
    Aさんの相続人らが、財産評価基本通達の基準に沿って相続税評価額を約3億3,000万円とし、相続税を0円で申告
    STEP
    国税庁は不動産の評価額が低すぎると主張し、不動産の評価額を独自で鑑定したのち2億円超の追徴課税を要求
    STEP
    Aさんの相続人らが追徴課税の取り消しを求めて裁判所に提訴
    STEP
    1審、2審ともにAさんの相続人らが敗訴
    STEP
    2022年4月、最高裁は総則6項を適用し国税庁の課税処分を適法と判断し、Aさんの相続人らの敗訴が確定
    金額備考
    マンションの購入金額13億8,700万円Aさんが91歳の時に購入(10億5,500万円は銀行からの借金)
    相続時らが申告したマンションの評価額3億3,370万円路線価などの評価方法を用いて通達内容に沿った相続税評価額を算出
    国税庁の独自算定によるマンションの評価額12億7,300万円相続人らの算出した評価額が低すぎるとして、独自で鑑定し評価額を算出
    相続人らと国税庁の評価額

    *最高裁は総則6項を適用し国税庁が独自で算定した評価額を指示した

    判決のポイント

    タワマン裁判で、Aさんらの行為につき、裁判所は以下の点に問題があると指摘しました。

    • 不動産の購入により相続税が0円になった
    • 相続税対策が主な目的であった

    銀行から多額の借金をしてまでタワーマンションを購入することで、相続税を0円として申告した点がポイントです。

    マンションの購入をせずに相続税を申告をしていた場合、相続税は2億円程度であったとされるため、タワマン節税で2億円ものお金が浮いた結果になります。

    銀行からのお金を借りる際に作成された稟議書に「相続税対策として不動産を購入」との記載があった点も大きいです。相続税対策を目的とする不動産購入だったという事実の証拠になりました。

    今後タワマン節税は否認され、できなくなる?

    最高裁の判決により、今後タワマン節税はできなくなるのでしょうか? この疑問について解説します。

    現状はやりすぎなければ実行できる

    タワマン裁判により今後はタワマン節税ができなくなるのではないか?と思う人もいるかもしれません。

    現状はやりすぎなければ実行できます。(しかし、2023年に総則6項とは別に税制改正が検討されています。)

    なぜなら総則6項が適用されるのは極端な事例に限り、総則6項が限定的に適用されるのを裁判所も認めているからです。

    判決文の内容によると、今後も「通達評価に基づく評価を継続する」とされています。総則6項の適用は、あくまで例外的です。

    不動産の購入価格と通達に沿って算出された相続税評価額に大きな開きがあるからといって、その事実だけで総則6項が適用されるわけではありません。

    しかしながら一般の人ができない極端な態様によるマンションの購入は控えるのが無難です。相続税の軽減のみを目的とする不動産の購入だと判断される恐れがあります。

    例えば以下の項目に当てはまる不動産の購入です。

    • 不動産の購入により相続税が0円になる
    • 通常はできない多額の借金をして不動産を購入
    • 不動産を購入した被相続人が高齢で近いうちに相続が発生する確率が高い

    上記の項目に当てはまるタワーマンションの購入は、税金逃れが主な目的だと判断される可能性がありますので注意しましょう。

    2023年度に税制改正が検討される

    2023年度の税制改正で、相続税における不動産の評価方法がより明確になる改正が検討されています。

    タワマン裁判により、総則6項が適用されるパターンが以前よりも具体的になりました。

    しかし絶対的な基準は未だに存在せず、不動産の相続税評価額をめぐって納税者が困惑してしまうケースも多いのは事実です。

    2023年の税制改正大綱では、不動産の相続税評価における問題点が解消される方向で話が進んでいます。

    2023年1月30日には、「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」が実施されました。

    その中で、マンションの相続税評価に関して確認がされています。

    マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。

    このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。

    マンションに係る財産評価基本通達にする有識者会議について

    【2023年6月最新】タワマン節税が事実上改悪の流れへ

    2023年6月1日に、「第二回マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」が実施されました。

    その中で、相続税評価額と市場価格の乖離が一戸建ての平均1.66倍に比べて、タワマンの場合は平均2.34倍とかけ離れていることが問題視されました。

    評価方法の検討として、候補となっているのが現行の相続税評価額に乖離率を乗じて評価する方法です。

    • 築年数
    • 総階数(総階数指数)
    • 所在階
    • 敷地持分狭小度(敷地利用権の面積(持分相当分)÷その建物の専有面積)

    相続税評価額が市場価格と乖離する4つの要因を考慮し、一戸建ての平均1.66倍に揃える狙いとして、乖離率は0.6とされています。

    これからは評価額の算出を行った結果、約1.67倍以上の乖離があった場合に、この乖離率を乗ずる方針となっています。

    これまでは評価額が市場価格の4割〜5割となっていたものが、6割以上となり事実上改悪の流れにあると言えます。

    国税庁は2023年度中に改正を行い、2024年1月1日以降に適用を目指しています。

    タワマン裁判に関するよくある質問

    今後、タワマン節税はできなくなるの?

    タワマン節税そのものは今後も実行できます。

    なぜなら総則6項が適用されるのは極端な事例に限り、総則6項が限定的に適用されるのを裁判所も認めているからです。

    タワマン節税とは?

    タワマン節税とはタワーマンションを購入し、手持ちの財産の評価額を下げることで、相続税を安く済ませる方法です。

    総則6項とは?

    総則6項とは財産評価基本通達第1章総則6項の略称で、条文は以下の通りです。

    この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

    節税対策の前に現状を分析する

    タワマン裁判では、相続を間近にしての相続税対策(マンションの購入)が相続人らにとって痛手になりました。

    早い段階で無理のない相続対策をしていれば、相続手続きが円滑に行われた可能性があります。

    対策を間違えないためには、現状の把握が必要不可欠です。

    まずは現状分析として財産診断をしてみることをおすすめします。

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