借地借家法の強行規定!? 意外と知らない不動産投資のリスクとは

借地借家法の強行規定 コラム

不動産投資に興味を持つ皆さまへ、わかりやすく「借地借家法」について解説します。借地借家法は、借地や借家に関する取引を適切に進めるための法律です。しかし、この法律の専門用語や規定、その適用結果などを考えると、一般の方々には難解に感じられるかもしれません。

不動産取引をする上で、この法律がどのように関わってくるのか、なぜ誕生したのか、その経緯も合わせてご紹介します。

また、契約される方が不利になる“特約”の無効性について、わかりやすく説明します。

不動産に関する法律は複雑で難易度が高いかもしれませんが、丁寧に学べば誰でも理解することができます。不動産取引を通じて安心で快適な生活を送るためにも、この記事の続きをぜひご一読ください。

佐賀大学卒業
公共土木設計に10年、測量・登記・開発に16年、不動産実務に13年、相続・後見に11年。
保有資格は土地家屋調査士、測量士、2級建築士、宅地建物取引士、相続対策専門士など他多数。
実務実績は相続相談件数が2,000件、任意後見契約数が300件、不動産売買仲介数が350件など他多数の豊富な実績。
コラムは実務での実体験を交えてわかりやすく解説しています。

トータル50年の実務実績を活かし、現在は不動産で悩む人がいなくなるよう、正しい不動産の知識を広める活動をしています。

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    目次

    借地借家法とは

    借地借家法とは、不動産の借地や借家に関する法律です。「賃貸人」と「賃借人」の間で起こる土地や建物の賃貸借契約関係に関するルールを明確に定め、その取り決めや解釈、適用について細かく規定しています。賃貸人が土地や建物を賃借人に貸し出す際の契約内容や条件、その後の関係性についても、この法律に基づいて判断や経過が進行します。

    本記事では、賃貸人と賃借人という言葉が多く出てきます。一度整理しておきましょう。

    賃貸人・・・貸主

    賃借人・・・借主

    借地借家法は、契約自由の原則に基づく一方で、特に賃借人の保護という視点から多くの強行法規を含んでいます。

    強行規定とは、当事者間の合意に関わらず必ず適用される法律の条文のことを指します。

    一定の条件下では、賃借人は契約解除や賃料の減額などを請求することが可能とされており、また、賃貸人が不利な条件を強いる特約をした場合には無効とされるなど、賃借人を保護する趣旨に沿った規定が設けられています。

    借地借家法と民法の違い

    賃貸借契約は、借地借家法と民法のどちらかが適用されます。

    借地借家法は「特別法」、民法は「一般法」であり、同じ内容の規定がある場合には、特別法である借地借家法が適用されることになります。

    特別法と一般法についても整理しておきましょう。

    一般法・・・広く一般的に適用される法律

    特別法・・・特定の人や場所、事項その他限られた場合にのみ適応される法律

    借地借家法は、賃借人が賃貸人から土地や建物を借りる時に特化した法律なので特別法となります。

    借地借家法はなぜ生まれたか?

    借地借家法は、現在の賃貸市場の健全な発展と、賃借人の権利保護を目的に生まれた法律です。土地や建物の賃貸借は、賃貸人と賃借人の間の契約に全てが委ねられていましたが、借地借家法が制定される以前は、個々の賃貸人と賃借人が個別に契約を結ぶ必要があり、その中には賃借人に不利な契約も少なくなかったのです。

    そこで、互いの権利を明確にし、かつ賃借人の保護を図るために、一定のルールを統一して規定する必要が生じました。それが借地借家法の成立の背景です。

    借地借家法は絶えず改正されており、現在もさまざまな課題や改定が求められています。例えば、賃貸借契約の期間について、公共の利害に鑑み、契約の当事者それぞれの意思を尊重しつつ、社会状況に応じたバランスの取れた契約が望まれています。

    借地借家法は貸主と借主の公正な契約を支え、良好な賃貸借関係を維持していくために不可欠な法律なのです。借地借家法があるからこそ、私たちは安心して家を借り、また貸すことができるのです。借地借家法の存在を知ることで、不動産投資や相続対策における視野が広がることでしょう。

    借地借家法が制定されるまでの歴史は下記の記事をご覧ください。

    借地借家法の強行規定について

    不動産に関する法律、特に賃貸や借地にまつわる問題は個々の権利を保護するため、その法律は、租借の関係を定める「借地借家法」に委ねられています。「強行規定」「任意規定」のような重要な項目が含まれています。

    • 強行規定・・・契約の自由を認める原則にも関わらず、特定の条件下でその効力を発揮し、何が契約されたに関わらずその条項が適用されるという、一定のルールが定められているものです。これは、賃貸人や借主の不利益を防ぎ、公正な契約環境を守る目的があります。
    • 任意規定・・・合意により契約内容を変更することができますが、賃借人に不利な変更は無効となります。

    借地借家法の条文にも下記のように明記されています。

    この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

    第三十条 強行規定

    賃借人に不利な特約は全て無効になるのか?

    賃借人に不利な特約は全て無効になるわけではありません。

    借地借家法の30条、32条、37条に明記されている条文に違反していた場合のみ、その特約は無効とされます。

    スクロールできます
    強行規定条項内容
    第30条第26条 建物賃貸借契約の更新契約満了前の一定期間で条件変更の通知がなければ、自動で契約期間が更新される
    第27条 解約による建物賃貸借の終了契約期間の定めのない建物賃貸借において、管理人(賃貸人)が入居者(賃借人)に立ち退きを求める
    第28条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件管理人(賃貸人)が入居者(賃借人)に立ち退きを求める場合は、正当事由がなければ認められない
    第29条 建物賃貸借の期間1年未満の賃貸借契約は期間の定めのない契約とみなす
    第37条第31条 建物賃貸借の対抗力引渡しさえあれば、その建物の賃借権を主張できる
    第32条第32条 借賃増減請求権家賃の価格が周囲と比べて開きがあると、家賃の上げ下げ交渉が可能
    第37条第34条 建物賃貸終了の場合における転借人の保護賃貸借が終了する時は、賃借人だけではなく、転借人にも通知してくださいね
    第37条第35条 借地上の建物の賃借人の保護明け渡しまでの猶予として、賃借人に1年間与える
    特約が無効とされる強行規定の一覧表

    逆に上記以外の条文に関する特約が違反していたとしても、無効とはなりません。そのため、上記の条文を深く理解しておくことでトラブルを未然に防ぐことが可能です。

    しかし、特約の解釈は個々の事例により異なりますので、当事者の通知に納得がいかない場合は、裁判に委ねられたり、専門家の意見が求められます。

    例えば、借主と賃貸人が互いの意思を確認し、契約を結んでも、その契約が法律に違反していれば、無効となる可能性があります。借地借家法の趣旨は、公平な賃貸借関係を維持して、借家人を保護することです。

    借地借家法には、こうした複雑な問題を適切に解決するための規定が存在します。だからこそ、不動産投資を行う際には、この法律を理解しておくことが大切です。

    借地借家法を悪用したワンルーム投資の罠...

    「ワンルーム投資はやめておけ」

    この話を一度は目にしたことがあるかと思います。それはワンルームマンションの購入時にサブリース契約がほとんどの確率でついて来るからです。

    サブリース契約とは、サブリース業者が賃貸物件を一括で借り上げ、入居者に転貸する制度です。

    このサブリース契約を結んでしまうと、何がいけないのでしょうか?

    それはオーナーから不動産を借り上げることで、サブリース業者が賃借人となり、借地借家法がサブリース業者を守ることになるからです。

    賃料が減額される恐れがある

    サブリース契約では、「空室リスクがない」「家賃保証がある」が謳われていますが、周辺家賃の下落や空室が増えてくることにより、賃料が減額される恐れがあります。

    「それでは、サブリース業者から賃料の減額請求ができないように特約を入れれば良いのではないか?」と思われたかもしれませんが、借地借家法32条により、強行規定で無効となります。

    これではサブリース業者の言いなりに賃料を調整することとなり、本来計画していた賃貸経営やローン返済が困難となる可能性があります。

    売却時に苦労する

    ワンルームマンションを売却したいとなった際に、どんなに立地が良い好物件だったとしても「サブリース契約をしている」というだけで購入を見送られるケースがほとんどです。

    不動産投資で利益を上げていきたい方は、サブリース契約のデメリット(手数料の支払い、賃料の引き下げ)を知っているので避けるということですね。

    そうなると、本来の売却金額よりも安くせざる追えない状況となります...

    では、サブリース契約を解約すれば良いのではないでしょうか?

    それも借地借家法26条,27条,28条により、強行規定で無効となります。

    サブリース契約の契約書には、「賃貸人から解約は3ヶ月前までに賃借人に予告する」と明記されています。

    実際には26条,27条の規定で「6ヶ月〜1年前までに予告すること」と明記されているため、無効となります。

    せっかく自分のタイミングで売却しようしても、サブリース契約が解約できないことでとても苦労します。

    また28条の規定により、「賃貸人から契約更新を拒絶するには正当事由が必要」と明記されており、「不動産を売却したいため」という理由は正当事由であると言えないでしょう。

    サブリース契約をする際は正しい知識を持ちましょう

    サブリース契約はメリットがある面、サブリース業者に借地借家法が適応されることで大きなデメリットが存在することが伝わったかと思います。

    「ワンルーム投資はやめておけ」と言われている通り、サブリース契約でトラブルが多発し、社会問題となりました。

    それにより、「賃貸住宅の管理業務等適正化に関する法律」が施行されました。(令和3年6月15日)

    国土交通省がガイドラインを掲載しておりますので、サブリース契約をする際には一読されて正しい知識を持った上で契約に進みましょう。

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      特約が無効とされる強行規定の一覧

      借地借家法において、特約が無効される強行規定は一部に限られております。

      これから該当する条文は1つずつ解説していきますので、ご自身でも条文を読んだりしてみて理解を深めていきましょう。

      下記が特約が無効とされる強行規定の一覧表となります。

      スクロールできます
      強行規定条項内容
      第30条第26条 建物賃貸借契約の更新契約満了前の一定期間で条件変更の通知がなければ、自動で契約期間が更新される
      第27条 解約による建物賃貸借の終了契約期間の定めのない建物賃貸借において、管理人(賃貸人)が入居者(賃借人)に立ち退きを求める
      第28条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件管理人(賃貸人)が入居者(賃借人)に立ち退きを求める場合は、正当事由がなければ認められない
      第29条 建物賃貸借の期間1年未満の賃貸借契約は期間の定めのない契約とみなす
      第37条第31条 建物賃貸借の対抗力引渡しさえあれば、その建物の賃借権を主張できる
      第32条第32条 借賃増減請求権家賃の価格が周囲と比べて開きがあると、家賃の上げ下げ交渉が可能
      第37条第34条 建物賃貸終了の場合における転借人の保護賃貸借が終了する時は、賃借人だけではなく、転借人にも通知してくださいね
      第37条第35条 借地上の建物の賃借人の保護明け渡しまでの猶予として、賃借人に1年間与える
      特約が無効とされる強行規定の一覧表

      借地借家法 26条 わかりやすく解説

      借地借家法26条は、「建物賃貸借契約の更新等」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「契約満了前の一定期間で条件変更の通知がなければ、自動で契約期間が更新される」という内容です。

      (建物賃貸借契約の更新等)

      第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

       前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

       建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

      第二十六条 建物賃貸借契約の更新等

      「契約満了前の一定期間で条件変更の通知がなければ、自動で契約期間が更新される」と都度合意を求めない更新方法を「法定更新」と言います。関連する用語として「合意更新」があります。

      法定更新・・・契約満了前の一定期間で条件変更の通知がなければ、自動で契約期間が更新される

      合意更新・・・契約満了前の一定期間で当事者同士が話し合い、合意を取った上で契約期間が更新される

      借地借家法 27条 わかりやすく解説

      借地借家法27条は、「解約による建物賃貸借の終了」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「契約期間の定めのない建物賃貸借において、管理人(賃貸人)が入居者(賃借人)に立ち退きを求める」という内容です。

      (解約による建物賃貸借の終了)

      第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。

       前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

      第二十七条 解約による建物賃貸借の終了

      賃貸人より解約の申し入れがあった日から6ヶ月を経過することで終了します。ただし、26条にある通り契約期間満了の1年〜6ヶ月の間に言わなければ無効とされます。

      また、賃借人も住居がなくなってしまうわけなので、正当事由(せいとうじゆう)が必要になります。

      契約期間満了の2~3ヶ月前になっての解約の申入れは認められないので、賃借人の負担にならないように計画的な賃貸経営を進めましょう。

      借地借家法 28条 わかりやすく解説

      借地借家法28条は、「建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「管理人(賃貸人)が入居者(賃借人)に立ち退きを求める場合は、正当事由がなければ認められない」という内容です。

      (建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

      第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

      第二十八条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件

      ただし、賃借人も住居がなくなってしまうわけなので、正当事由(せいとうじゆう)が必要になります。

      正当事由とは、賃貸人が土地や建物の賃貸借契約を解約したり、更新を拒絶したりする際に必要とされる条件のことです。

      わかりやすく言えば、賃貸人の気分で賃借人との契約を終了できるわけではなく、それなりの理由がないと認められないということです。

      正当事由の例としては、下記のようなものがあります。

      • 建物の老朽化による強度不足
      • 建て替えや大修繕をする
      • 貸主自らが物件を使用しなければならなくなった場合
      • 家主や家族、近親者や従業員が住むために必要
      • 家主の営業に必要
      • やむを得ず生計のために売却する必要がある

      上記の例は、「第28条 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件」にも明記されており、これまでの裁判例の判断基準を明文化したものと言われています。

      借地借家法 29条 わかりやすく解説

      借地借家法29条は、「建物賃貸借の期間」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「1年未満の賃貸借契約は期間の定めのない契約とみなす」という内容です。

      (建物賃貸借の期間)

      第二十九条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

       民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

      第二十九条 建物賃貸借の期間

      昨今は民泊など賃貸借契約も多様化しています。「数ヶ月間の間だけ誰かに貸したい...」といった場合に普通借家契約で存続期間が1年未満の契約を結んでしまうと、解約には正当事由が必要になるのでトラブルが発生してしまう恐れがあります。

      数ヶ月間など短期間の契約は、必ず定期借家契約で行うようにしましょう。

      また第2項をわかりやすく解説すると、「民法で賃貸借の存続期間が最長50年とされているが、建物の賃貸借は適用しない」といったものです。

      (賃貸借の存続期間)

      第六百四条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。

       賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

      民法 第六百四条 賃貸借の存続期間

      民法での「賃貸借」は、不動産のみならず、土地や物の賃貸借を含んで明記されています。

      最長期間はありませんので、賃貸人・賃借人のどちらかが解約の申入れを行わない限りは、法定更新がなされるということになります。

      借地借家法 31条 わかりやすく解説

      借地借家法31条は、「建物賃貸借の対抗力」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「引渡しさえあれば、その建物の賃借権を主張できる」という内容です。

      (建物賃貸借の対抗力)

      第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

      第三十一条 建物賃貸借の対抗力

      引渡しとは、賃貸人と契約を結んで、借家(アパートやマンション等)に住んでいること

      民法上では登記しなければ、第三者に対抗することができない。と明記されています。

      (不動産賃貸借の対抗力)

      第六百五条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

      民法 第六百五条 不動産賃貸借の対抗力

      第三者とは何か?と言うと、Aさんが賃貸人、Bさんが賃借人とした時、Aさんが建物や土地をCさんに譲渡した場合に、Bさんは賃借権をCさんに主張して対抗できるのか。といった内容です。

      借家の場合、賃借人(Bさん)が登記するのは現実的ではないですよね。

      そこで31条では、登記以外の対抗策として引渡し(借家に住んでいる)されていれば、賃貸権の主張が可能です。

      借地借家法 32条 わかりやすく解説

      借地借家法32条は、「借賃増減請求権」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「家賃の価格が周囲と比べて開きがあると、家賃の上げ下げ交渉が可能」という内容です。

      (借賃増減請求権)

      第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

       建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

       建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

      第三十二条 借賃増減請求権

      新築から数十年も経つと、周辺に新しいマンションが建ち並び徐々に入居が決まりずらくなります。

      そうなった時に、契約更新のタイミングで入居者(賃借人)から家賃の減額の請求が届くのがよくある事例です。

      「一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」と定められていますが、強行規定により無効とされ、契約更新時等関係なく、入居者が交渉できることになっています。(定期借家契約を除く)

      請求を行うための流れは下記になります。

      • 内容証明郵便等で賃料の増額・減額請求を通知
      • 入居者(賃借人)と管理人(賃貸人)で話し合い
      • 話し合いがつかない場合、調停を申し立てる
      • 調停が成立しない場合、訴訟を提起する

      3項にある通り、賃貸人としては、減額請求が通知されたとしても「賃借人が相当と考える賃料(普通借家契約に記載されている金額)」を請求し続けることが可能です。ただし、裁判によって減額請求が認められれば、差額とその額の年1割の利息を支払う義務が発生します。

      話し合いに応じるか裁判まで持ち込むかは、悩むところですが空室リスクや周辺物件の動向など総合的にみて判断されると良いでしょう。

      借地借家法 34条 わかりやすく解説

      借地借家法34条は、「建物賃貸終了の場合における転借人の保護」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「賃貸借が終了する時は、賃借人だけではなく、転借人にも通知してくださいね」という内容です。

      (建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)

      第三十四条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

       建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。

      第三十四条 建物賃貸借終了の場合における転借人の保護

      転貸借とは、賃借人が賃貸人から借りている建物や土地を第三者に貸し出すことです。又貸しとも呼ばれています。

      借家の場合、借地借家法には転貸についての明記がないため、民法に順守する必要があります。

      (賃借権の譲渡及び転貸の制限)

      第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

       賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

      民法 第六百十二条 賃借権の譲渡及び転貸の制限

      民法によると、賃借人は、賃借権の譲渡・転貸をする時には賃貸人の承諾が必要と明記されており、無断で行なった場合は賃貸借契約を解除されてしまいます。

      つまり、34条が適用される時は、賃貸人が転貸借を承諾している状態ですから、転借人にも通知するよう明記されているわけです。

      転借人も次の住居を探す必要があるので、6ヶ月間の猶予があります。ちなみに転借人に通知が漏れてしまうと、賃借権の主張が通り、追い出すことができなくなります。

      借地借家法 35条 わかりやすく解説

      借地借家法35条は、「建物賃貸終了の場合における転借人の保護」について明記されています。

      わかりやすく解説すると、「賃借人に土地の明け渡しの猶予として、1年間与える」という内容です。

      (借地上の建物の賃借人の保護)

      第三十五条 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

       前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。

      第三十五条 借地上の建物の賃借人の保護

      突然、賃貸人に出て行けと言われても賃借人も困りますので、引越しや手続きを行う猶予して1年間与えられる条文になります。

      借地借家法の強行規定まとめ

      今回は借地借家法の強行規定と対象となる条文をわかりやすく解説しました。

      借地借家法は、賃借人を保護する法律なので賃貸人は関係のない法律だ。と思う方もいるかもしれませんが、円滑に賃貸経営を進めていく上では大切になりますので原文も読んでおくことをおすすめします。

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