今回は貸宅地の整理と資産組換えにより、管理負担の軽減と収益改善を実現した事例をご紹介します。
ご相談者プロフィール
今回ご相談をいただいたのは、父が亡くなり相続が発生したご家族です。
| 父 | 死亡 |
|---|---|
| 母 | 70歳 |
| 長女 | 45歳(未婚・母と同居) |
| 二女 | 35歳(既婚) |
父が長年にわたり一人で管理してきた不動産を、母・長女・二女の3人で引き継ぐことになりました。

保有資産
相続財産の内訳は以下のとおりです。
| 財産の種類 | 内容 | 評価額(概算) |
|---|---|---|
| 土地(全体) | 貸宅地20ヶ所・自宅・貸駐車場など | 約3億円 |
| 貸宅地(相続税評価額) | — | 約1.5億円 |
| 建物 | — | 少額 |
| 現預金 | — | 約2,000万円 |
【年間収支】
- 地代収入:年間約300万円
- 固定資産税:年間約100万円
- 実質的な手取り収入:年間約200万円
土地の総額は3億円にのぼる一方、貸宅地の実質利回りは約2%にとどまっていました。資産規模に対して収益性が低く、さらに管理の手間が大きくのしかかるという状況でした。
BEFORE|相続後に残った「見えないリスク」と負担
- 父の他界後、更新手続きや借地人対応がわからず管理に行き詰まった
- 土地の境界が未確定のため、売りたくても売れない状態だった
- 自宅の老朽化も重なり、複数の問題が同時に噴出した
父の死後に浮上した「管理の困難さ」
父が亡くなり、相続税は合計で数億円にのぼりました。納税のために土地の一部を売却してなんとか乗り越えたものの、その後に大きな問題が浮上しました。
貸宅地の管理はすべて父が一人で行っていたため、相続後はご家族が内容を十分に把握できないまま引き継ぐことになったのです。
- 更新手続きの進め方がわからない
- 更新料の相場や設定方法が不明
- 借地人とのやり取りに精神的な負担を感じる
地代収入は生活を支える大切な収入源でしたが、管理を続けることへの不安と負担感が日々蓄積していました。
処分したくても処分できない複合的な問題
もう一つの課題は、貸宅地が借地境で分筆されていなかったことです。
未利用の自用地を売却したくても、土地の境界が法的に確定していないため処分ができない状態が続いていました。さらに、自宅は築50年を超え、大規模な改修または建替えが必要な時期を迎えていました。
整理したい気持ちはあっても、どこから手をつければいいのかわからない。処分しようにも手続きが進められない。こうした複合的な課題が絡み合っていました。
ACTION|当社の提案と解決策
- 約2年かけた分筆で、土地の売却・管理に必要な整理を実現
- 一次相続から5年後、管理負担の大きい貸宅地を専門業者に一括売却
- 遊休地への賃貸併用住宅建築で利回り2%→6%・固定資産税1/6を実現
2年かけて分筆を実施
複数の課題を解きほぐすために、最初に着手したのは借地境での分筆です。
土地の境界が確定していなければ、どの土地がどの借地人のものかが法的に不明確なまま。売却しようにも、買い手がついた後の手続きが進みません。そこで、全借地人との境界確定立会いを経て、分筆登記の手続きを進めました。
境界確定から分筆完了まで、全借地人との立会いを一件一件丁寧に行いながら、約2年をかけて進めた結果、法務局に地積測量図が備え付けられ、現地にも境界標が設置されました。これにより、当初から売却を検討していた未利用地を一般市場に出すことが可能となり、好条件での高値売却を実現しました。
5年後の再相談と底地の一括売却
一次相続から5年が経過したころ、再びご相談をいただきました。議題は3つです。
- 自宅の建替えを本格的に検討したい
- 未利用地の活用について相談したい
- 引き続き負担の重い貸宅地を整理したい
ご家族の話し合いの結果、母が亡くなった後は自宅敷地・駐車場・貸宅地を含めて全体を売却する方針が固まっていました。そのため、最も扱いにくい貸宅地から先に処分する戦略を選択しました。
貸宅地(底地)の処分には、主に2つの方法があります。
| 方法 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 借地人への打診 | 個別に買取または共同売却を借地人に交渉する | 高値が期待できる。交渉に時間がかかる場合も |
| ② 専門業者への売却 | 底地を一括で専門業者に買い取ってもらう | スピーディー。まとまった土地の処分に向く |
今回は、分筆時の立会いを通じて借地人の意向をある程度確認できていたこと、そしてまとまった土地として評価される状況が整っていたことから、②の専門業者への一括売却を選びました。
その結果、相続税評価額相当という底地売却としてはかなり良い条件での売却を実現しました。
AFTER|資産が「管理できる収益資産」に変化
収益改善、管理負担の軽減、相続対策を実施し、「動かせない資産」から「活かせる資産」に変化しました。
✔ 管理面
・借地境が明確 → トラブルリスク解消
・複雑な貸宅地を整理 → 精神的負担の軽減
✔ 収益性
・利回り:約2% → 約6%へ改善
・安定した賃料収入へ転換
✔ コスト削減
・固定資産税:更地 → 住宅用地で1/6
✔ 相続対策
・建築後5年以降
→ 相続税評価の圧縮
✔ 遊休地への賃貸併用住宅建築で収益力を改善
底地売却によって失われる地代収入を補うとともに、自宅の建替えも兼ねる形で、遊休地への賃貸併用住宅の建築計画を進めています。
この計画が実現した場合に期待できる効果は次の3点です。
- 固定資産税の大幅軽減:更地に適用されていた固定資産税が、住宅用地特例の適用により1/6に軽減される
- 収益性の大幅改善:貸宅地では約2%だった利回りが、賃貸併用住宅では約6%程度まで向上する見込み
- 将来の相続税評価の圧縮:建築後5年以降には建物の減価による評価引き下げ効果も期待できる
POINT|この事例の本質
ポイント1:いきなり活用しない
→ まず「整理(分筆・境界確定)」
ポイント2:難しい資産から先に処分
→ 貸宅地 → シンプル資産へ
ポイント3:将来の出口から逆算
→ 「最終的に売却」を前提に設計
メッセージ
貸宅地や底地は、
「持っているだけで安心」な資産ではありません。
- 管理できない
- 動かせない
- 収益性が低い
この3つが揃うと、
“負担の大きい資産”に変わります。
本事例のように、
段階的に整理し、資産を組み替えることで、
収益・管理・相続のすべてを最適化することが可能です。

