農地を守り、農業を継続するための重要な役割を担ってきた農地法が、令和5年(2023年)に新たな改正を迎えました。
一般の人には馴染みの薄いかもしれないこの法律、でも今回の改正は農地を取り巻く環境を大きく変えるかもしれません。
具体的には、今まで売却先が見つからず農地を手放せずにいた方や相続で農地を引き継いだ方が売りやすくなりました。
それは、下限面積が廃止され、売り手、買い手双方にとって注目すべきポイントが満載だからです。
これらの変更内容は、これから相続対策を検討されている皆様にとっても大きな影響を与える可能性があります。
では、農地法のこれまでの歴史や目的、改正された内容とその意義について、50代、60代の方々にもわかりやすく解説していきます。
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令和5年の農地法改正で農地を売りたい方が売りやすくなりました
皆さん、農地を売りたいと考えた際に、「全然買い手が見つからない」と諦めた経験はございませんか?
しかし、令和5年、すなわち2023年に入って、そんな心配がなくなったのはご存知ですか?
知らなかった。といった方も多いかもしれませんが、農林水産省が中心となって行われた農地法改正により、これまで必要だった下限面積が廃止されました。
これまでは、農地を所有するためには、一定の耕作面積が必要であり、売り手が見つからない原因と1つとなっていました。
しかし改正後は、どれだけ小さな面積であっても、農業委員会への申請を通じて農地の権利を取得できるようになります。
これにより、買い手のハードルが下がった分、「農地を売りたい、手放したい」方が売りやすくなったのです。
農地と聞くと、広大な土地をイメージする方も少なくありませんが、市街化区域の外れや、見落としがちな遊休農地や採草放牧地も農地に含まれます。
この改正の目的は、農業者の高齢化と減少に対する対策、そして農地の効率的な利用促進にあります。地域内外からの新規参入者を迎え、農業生産の活性化を図ることが狙いです。
農地を売りたい方が売りやすくなり農地の流動性が高まってことで、これまで以上に身近な選択肢となるこの法律改正。
担い手が見つからなかった方や相続で農地の処分に困っていた方にとっては、非常に重要な一歩となるでしょう。
農地法とは、農地などの取扱いを定めた法律
農地法とは、日本の農地の所有や利用に関わる重要な取扱いを定めた法律です。
農地法によって、農地が効率的に利用され、農業が安定して行われるように計画されています。
農林水産省の指導の下、地域の農業委員会がその実施を監督しており、農地に関する売買や貸借、そしてその他の権利移動などには、ほとんどの場合、当該の許可や届出が必要とされます。
農地法では以下のように定められています。(一部抜粋)
農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
農地法 第一条 目的
農地法の目的
農地法は、農業生産基盤の保全と強化を主な目的に制定されました。
具体的には、小作人が自分の土地を持てるようにし、安定した農業経営を可能にすることや、食料供給の安定に貢献することが目指されています。
農地を効率的に利用し、集積して耕作することで、農業生産性を向上させる事業を促進するための要件や制限も定められています。
農地法の歴史
1952年の農地法制定以来、日本の農村経済や農業構造の変遷に合わせて、多くの改正が行われてきました。
年度 | 内容 |
---|---|
1952年 | 農地法制定 |
1962年 | 農業生産法人制度の設置 |
1970年 | 権利移動規制緩和、農業生産法人要件緩和、農地保有合理化事業新設、自作農主義から借地主義へ |
2009年 | 利用権の自由化、利用期間最長50年 |
2016年 | 農業生産法人から「農地所有適格法人」へと名称変更、法人の要件緩和 |
2023年 | 下限面積の廃止 |
1961年に制定された農業基本法では、農地の産業化・工業化が図られました。翌年の1962年に初めて農地法の改正が行われ、「農業生産法人制度」や「農地信託制度」が誕生しました。さらに、最高免責制限が緩和されました。
1970年の改正では農地の取得を容易にし自作から借地への転換を促しました。
また、農地の流動性を高めるための改正が1975年と1980年に施行され、農地利用の効率化が進みました。
2000年では、農業生産法人だけでなく株式会社による農地所有の道が開かれ、2009年の抜本改正で農業参入の規制が緩和されました。緩和により、個人や法人の参入がしやすくなりました。
2016年の改正では、農業生産法人の名称が「農地所有適格法人」へ変更となりました。さらに、法人の4つの要件(法人形態要件、構成員・議決権要件、事業要件、役員要件)のうち、「構成員・議決権要件」と「役員要件」の2つの要件が緩和されされ、より参入ハードルが緩和されました。
戦後の農地改革から始まった農地法は、5回の改正を通して、日本の農業を支える根幹の一つであり続けています。
令和5年の改正で農地法第3条が改正されました
令和5年(2023年)、農地法第3条の改正が実施され、農地法における重要な規定が見直されました。
これまでの農地法では、農地を取得する際には農業委員会への許可が必要であり、特に50アール以上の耕作面積を要求するなどの下限面積要件が存在していました。
この度の農地法改正によって、その要件が廃止され、農地を売りたい方や相続で農地の処分に困っていた方が売りやすくなり流動性が高まります。
農地法改正によるメリット
農地法第3条の改正によって、どういったメリットがあるか解説していきます。
- 売り手
- 買い手
- 相続を受ける家族や本人
農地を処分したい売り手が楽になった
許可の申請に関する手続きが簡単になったことで、売り手にとっても大きなメリットが生まれました。
以前は農地を売却しようとする際に、買手が耕作面積の要件を満たすかどうかの確認を要しましたが、今後はその心配が不要になります。
この改正により、農地の売却はさらに効率的に進むことでしょう。
個人や企業が買いやすくなった
これまでの下限面積要件の撤廃により、50アール未満の農地でも、個人や法人が購入しやすくなりました。
これにより新たに農業に携わろうとする人たちや、農業経営を拡大しようと考えている既存の農業者も、小規模な土地からでも始めやすくなるでしょう。
地域の活性化にも寄与すると期待されています。
相続時の農地問題に選択肢ができた
相続の際の農地問題も、この改正によって新しい選択肢が生まれました。相続によって農地を受け継いでも、新たに農業に従事することなく、容易に他人への売却や農地バンクを活用した貸借が可能になります。
そうすることで、使用されずに放置されがちな遊休農地や採草放牧地の有効活用が図られ、地域の農地の集積という目的も達成しやすくなるでしょう。
下限面積とは農地を所有する場合に最低限必要な面積
農地を取得する際に、農業委員会の許可が必要です。
この際、農地法第3条には、「一定の面積以下では許可を与えない」という下限面積が設定されていました。
農地を所有し、農業を始めるには都府県では50アール(5,000平米)以上、北海道では2ヘクタール(20,000平米)以上の土地が必要だったのです。
下限面積廃止の目的
下限面積廃止の目的は主に3つあります。
- 農地の流動性を高める
- 農地の有効活用を図る
- 人の確保と育成
今までは、下限面積があることで農地を売りたい方が沢山いるにも関わらず、買い手が見つからない状況になっていました。
下限面積が撤廃されることで、買い手が見つかりやすくなり、農地の流動性を高まる狙いがあります。
農業分野への新規参入を促進し、地域内外からの意欲ある新しい農業者を迎え入れ、農地の有効活用を図ることにあります。
また農林水産省が先頭となって、農地バンクの促進と農地の集積・集約化が進められています。これまでは遊休農地・所有者不明農地が農地活用できませんでしたが徐々に活用できる農地が増えていきます。
まとまった農地があることで、農地の分散を解消し、農作業の効率がアップします。これから新規に農業を始める方には嬉しいことですよね。
背景には新規就農者の半分が50アール未満の現状が
令和5年の農林水産省が発表したデータによると、新規に農業に参入する方々の中でも、特に野菜や果樹を栽培する部門で入る人は多く、その約7割が集中しています。
実はこの分野に新しく参入する農家のうち、半数以上が50アール未満の小規模な経営を始めるという事実がありました。
農地法の改正は、こうした現状を踏まえたもので、規模の大小を問わずに誰もが農業を始めやすい環境を整えることが求められているのです。
農地法に関する売買の手続き
農地の売買を検討されている方へ3種類の手続きを解説します。
- 農地のまま売買する場合
- 農地を転用して売買する場合
- 農地を相続した場合
農地のまま売買する場合
農地のまま売買する場合は、農業委員会からの許可が必要です。(農地法 第3条)
農林水産省より、「許可手続きの流れ」が解説されており、以下の手続きが案内されています。
- 申請者から農業委員会へ「申請書提出」
- 農業委員会から申請者へ「許可通知」
農地法では以下のように定められています。
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
農地法 第3条 農地又は採草放牧地の権利移動の制限
農地を転用して売買する場合
農地を転用して売買する場合は、農業委員会を経由して都道府県知事等からの許可が必要です。(農地法 第4条)
農林水産省より、「農地転用の手続き」が解説されており、以下の手続きが案内されています。
30a以下の農地を転⽤する場合
- 申請者から農業委員会へ「申請書提出」
- 農業委員会から都道府県知事等に「意見を付して送付」
- 都道府県知事等から申請者へ「許可等の通知」
30aを超える農地を転⽤する場合
- 申請者から農業委員会へ「申請書提出」
- 農業委員会から都道府県農業委員会へ「意見聴取」
- 都道府県農業委員会から農業委員会へ「回答」
- 農業委員会から都道府県知事等に「意見を付して送付」
- 都道府県知事等から申請者へ「許可等の通知」
農地を相続した場合
農地を相続した場合は、農業委員会へ届け出をする必要があります。
農林水産省より、届出に関するパンフレットが発行されており、以下の相続時の手続きが案内されています。
- 相続登記(所有者の名義変更)
- 届け出(相続人の氏名と住所等)
- 土地活用の意思表示
よくある質問
農林水産省の狙いもわかりやすく解説しました
令和5年に施行された農地法改正により、農業分野への新たな風が吹き始めています。
農林水産省が推進するこの法改正は、農地を巡る所有権や取引をスムーズにし、農業の効率化と活性化を目指しています。
改正された3条を軸に、農地を売りたい方が売りやすくなりました。
また、下限面積の廃止は、小規模な農地も売買や貸借の対象となり、地域ごとの農土を守りつつ、集積促進と農業経営の安定を図ろうとする意図があります。
すべての手続きは農業委員会による審査を経て行われますが、改正前ではみられた煩雑な流れを簡素化し、農地を守りながらも、時代に即した動きやすさを提供しています。
相続や農地転用などの場面でも適切な対策が可能となり、誰もが農業に関わる権利と機会を持てるようになりました。
読者の皆さまも、この法改正をきっかけに、新たな相続対策の選択肢に目を向けられてはいかがでしょうか。
令和の新時代における、農地法のメリットと可能性を最大限活用し、日本の農業が一層輝く未来への一歩としてください。
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