孤独死保険は存在しない?代わりになる保険と日常の備え方

孤独死保険は存在しない?代わりになる保険と日常の備え方

孤独死は誰にとっても起こりうる現実的なリスクです。

しかし「孤独死保険」という名前の商品は存在しません。実際には、火災保険や家財保険に付帯する特約がその役割を担っています。

本記事では、大家さん向けの家主型と入居者が加入する入居者型の違いをわかりやすく解説し、費用補償の内容やメリット・デメリットを整理しました。

備えと予防の両面から、安心できる暮らしのヒントをお伝えします。

東京都庁で5年勤務したのち、FPとして独立。生前対策領域に7年間従事。
保有資格は一級ファイナンシャル・プランニング技能士、第一種証券外務員資格。
顧客対応実績は数百名。セミナー開催実績多数。
コラムでは実際にお客様から寄せられるご質問やお悩みを中心にわかりやすく解説します。

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    目次

    「孤独死保険」とは?

    結論から言うと、実は「孤独死保険」という名称の保険は存在しません。

    ただし実際には、火災保険や家財保険などの損害保険に「孤独死にまつわる費用や損失」を補償対象とした特約が付帯しているケースがあります。

    代表的な保険は以下の2つです。

    • 費用保険(単独保険)
    • 家財保険(特約)

    補償の対象になるのは、たとえば次のようなものです。

    • 特殊清掃や消臭の費用
    • 原状回復やリフォーム・修理費用
    • 発見までの空室期間にかかる家賃損失
    • 遺品整理や残置物処分の費用

    つまり、世間で「孤独死保険」と呼ばれているものは、実際には「孤独死リスクをカバーする損害保険の一部」なのです。

    「孤独死が不安...」個人でも入れる?

    ここで誤解しやすいのが、「孤独死を不安に思う入居者本人が加入できるのか?」という点です。

    結論としては、個人が直接加入するものではありません。
    孤独死関連の保険は、主に 不動産オーナー(大家さん)や管理会社が、入居者の孤独死リスクに備えるために加入する損害保険 です。

    その目的は、万一孤独死が発生した際に、

    • 清掃費や修繕費用
    • 家賃収入の減少による損失
    • 事故対応や賠償責任の補償

    をオーナー側でカバーできるようにすること。
    つまり「入居者本人」ではなく「貸す側」のためのリスク対策が中心となっています。

    ただし、実際には家財保険に付帯する特約が、入居者側の負担軽減につながるケースもあります。

    孤独死保険の種類

    孤独死リスクを補償する保険は、大きく分けて「家主型」と「入居者型」の2種類に分類できます。

    家主型入居者型
    保険種類単独保険家財保険(特約)
    契約者家主・管理会社入居者
    被保険者家主・管理会社入居者
    補償内容賃貸経営のリスク管理
    ①原状回復費用
    ②特殊清掃費用
    ③家賃損失
    遺族や相続人の費用負担を軽減
    ①清掃費
    ②遺品整理
    ③原状回復費用
    保険料戸数や家賃によって異なる家財保険の保険料に含まれる

    「家主型」孤独死保険の特徴(メリット・デメリット)

    メリット
    家主型の最大のメリットは、家賃損失までカバーできる点です。
    孤独死が発生すると、部屋は「事故物件」として扱われ、原状回復や特殊清掃のための費用・時間がかかります。その間、家賃収入が途絶えたり、入居者が敬遠して空室期間が長引いたりするリスクがあります。

    孤独死保険に加入しておけば、こうした家賃収入の減少や空室による損失を補償してもらえます。
    実際、日本少額短期保険協会の「第4回孤独死現状レポート」によると、家賃保証の保険金支払額は平均32万円ほど。万一のときに、これだけの金額が保証されるのは大家さんにとって大きな安心材料です。

    デメリット
    一方で、入居者型と比べると保険料負担は大家さん側に発生します。ただし、保険料は1戸あたり数百円程度と比較的安価で、賃貸経営全体のリスクヘッジと考えれば大きな負担にはなりにくいでしょう。

    「入居者型」孤独死保険の特徴(メリット・デメリット)

    メリット
    入居者型の大きなメリットは、大家さんに保険料の負担がないことです。
    入居者が加入する「家財保険(火災保険)」の特約として契約するため、孤独死だけでなく火災・落雷・風災などの災害リスクも包括的に補償されます。

    デメリット
    一方で、入居者型には家賃損失の補償が含まれていないという弱点があります。
    そのため、孤独死が原因で家賃を減額したり、長期間空室になったりしても、オーナーの収入減少まではカバーされません。

    また、契約者は入居者本人となるため、孤独死が発生した場合、保険請求は入居者の相続人が行う必要があります。もし相続人が不在だったり、請求手続きがされなかったりすると、補償が受けられないリスクがあります。

    ただし最近では、相続人がいない場合でも大家さんや管理会社が直接保険金請求できる特約を設ける保険会社も増えており、契約前に確認しておきたい重要なポイントです。

    「孤独死」を防ぐためには?

    では、「孤独死そのもの」を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
    保険は発生後の備えですが、予防には日常のつながりづくりが欠かせません。

    • 普段から家族や友人と安否・健康状態を確認し合う習慣を持つ
       (直接「元気?」と聞くだけでなく、定期的な連絡やイベント、ちょっとしたやり取りが“確認のきっかけ”になります)
    • 家族や友人が近くにいない場合は、代わりに見守りをしてくれる事業者と早めに契約しておく
       (見守りサービスや訪問サービスを通じて「関係性」を築いておくことが大切です)

    最近では、見守りサービスが充実しています。下記の記事で詳しく解説しています。

    備え(保険)と予防(日常のつながり)を両輪で考えることが、安心した暮らしのためのカギとなります。

    孤独死保険は無いので、自らで備えと予防を

    「孤独死保険」という名前の保険はありません。
    実際には、大家さんが入居者の孤独死にまつわる損失をカバーする損害保険 が存在しているだけです。

    孤独死そのものを減らすには、日常からのつながりづくりや、見守りサービスとの関係構築が欠かせません。

    備えと予防―両面を意識しておくことで、本人も周囲も安心して暮らすことができます。

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