いま、単身世帯や子どものいないご夫婦が増えています。
「自分が亡くなった後、誰が火葬して、お墓に納骨してくれるのだろう?」
そう感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
実は、亡くなったあとに火葬や納骨を行うには「行政手続き」や「お墓の管理者とのやりとり」が必要で、これらは原則として家族が行うものとされています。
けれど、家族がいない、疎遠で頼れない―そんな状況では、誰も動けず“遺体が宙に浮いてしまう”ことも起こり得るのです。
とはいえ、そうした不安にずっと悩まされる必要はありません。実は、そんな不安を和らげ、自分らしい最期を整える手段があるのです。
その手段が「死後事務委任契約」です。
死後事務委任契約とは、「亡くなった後の手続きをお願いする人(受任者)」を決めておく契約です。
本記事では、死後事務委任契約について解説していきます。この契約があればおひとりさまでも大丈夫。事前に準備をしておくことで将来への不安が和らぎ、安心して自分らしい最期を迎えることができるでしょう。
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死後事務委任契約とは?活用して安心を形に
死後事務委任契約とは、「亡くなった後の手続きをお願いする人(受任者)」を決めておく契約です。
便利な制度に聞こえますが、依頼できること、依頼できないことがありますので、詳しく解説していきます。
死後事務委任契約で依頼できること
具体的には次のようなことを、死後事務委任契約で依頼できます。
- 病院や施設からのご遺体引取り
- 火葬や納骨の手配
- 家財整理・住居の原状回復
- 公共料金や契約の精算
- 関係者への連絡
病院や施設からのご遺体引取り
人が亡くなると、まず必要になるのがご遺体の引き取りです。病院や高齢者施設などで死亡が確認された後、ご遺体は一定時間内に搬送する必要があります。一般的には親族が手配するものですが、親族がいない、または疎遠な場合には、引き取り先が見つからない、あるいは親族に引き取りを拒否されるケースもあります。
実際に、総務省の調査では、2018年4月から2021年10月までの間に10万人以上が「引取者のない死亡人」として報告されており、遺体の引き取り手がいない事例は決して珍しくありません。こうした場合、遺体は自治体によって火葬され、無縁仏として合葬されることになります。

また、遺体の引き取りがされないことで、賃貸住宅の大家や施設管理者に大きな負担がかかるなど、社会的な問題にも発展しています。
そこで役立つのが死後事務委任契約です。この契約では、ご遺体の引き取りを受任者に依頼することが可能です。受任者は、本人の死亡時に葬儀社や搬送業者と連携し、適切に搬送手続きを進めてくれます。あらかじめ信頼できる人を遺体の引取人として指定しておけるため、無縁仏となってしまうリスクや周囲に迷惑をかける心配を減らすことができます。
火葬や納骨の手配
人が亡くなった後には、様々な行政手続きや葬送の準備が必要になります。具体的には、役所への死亡届の提出、火葬許可証の取得、そして葬儀場の手配や火葬の予約などが挙げられます。こうした手続きは、通常であれば家族が担うものですが、死後事務委任契約を結んでおけば、あらかじめ指定した受任者がこれらをすべて代行することが可能です。
葬儀の形式や規模、宗教儀式の有無、直葬(通夜や告別式を行わず火葬のみ行う形式)にしたいといった希望も、契約時に細かく取り決めておくことができます。さらに、火葬後の納骨先や永代供養の希望についても指定が可能です。たとえば、「〇〇寺の合祀墓に納骨してほしい」「樹木葬で自然に還りたい」といった思いを伝えておけば、それに沿った形で手配してもらえます。
家財整理・住居の原状回復
亡くなった後の住まいには、家具や日用品、思い出の品々など多くのものが残されます。特に賃貸住宅の場合は、契約を終了し、部屋を元の状態に戻す「原状回復」を行う必要があります。また、居住していた部屋や施設の清掃や家財の整理・処分、売却などの手配も必要となり、残された人にとって大きな負担になりがちです。
こうした遺品整理や清掃・原状回復などの作業を受任者に依頼することが可能です。受任者が必要に応じて専門の遺品整理業者や清掃業者に依頼し、スムーズに片付けや手続きを進めてくれます。
公共料金や契約の精算
電気・ガス・水道・インターネットといった公共料金や、携帯電話、クレジットカードなどの契約は、死亡後に速やかに解約・精算する必要があります。これらの手続きが放置されると、延滞料金が発生したり、利用料金の請求が継続されたりすることがあり、不要な負担やトラブルにつながる可能性があります。
また、亡くなるまでにかかった家賃、介護費、医療費などの未払い分についても、整理しておくことが大切です。これらは法律上、相続人に支払い義務が引き継がれる可能性があるものです。民法第899条では「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する」と定められており、たとえ知らないうちでも、家族や親族に債務請求が届く場合があります。
こうした状況を未然に防ぐには、契約の解約や支払いの精算を受任者に任せておくことが有効です。
Webサービスの解約やデジタルデータの処分
最近では、インターネット上の契約や個人データも重要な「遺品」のひとつになっています。SNSアカウント、メール、クラウドストレージ、サブスクリプションサービス、ネットバンクや証券口座などのWebサービスは、死亡後に確実に解約や削除の手続きを行う必要があります。
しかし、こうしたデジタル関連の手続きはパスワード管理や本人認証が複雑で、親族が対応しようとしても困難なケースが多いのが現実です。情報の取り扱いを誤ると、個人情報流出や不正アクセスといった思わぬトラブルを招く可能性もあります。
死後事務委任契約を結んでおけば、信頼できる受任者にこれらの手続きも依頼することが可能です。アカウントの削除、データの整理・消去、サブスクの解約など、デジタル遺品についての希望を契約時に明確にしておけば、遺された人が悩むことなく、適切に対応してもらえる環境を整えることができます。

関係者への連絡
死亡を知らせるべき人や団体(親族、知人、勤務先、年金機関、保険会社など)への連絡も必要になります。死後事務委任契約では、あらかじめ通知すべき相手をリストアップしておくことで、受任者が必要な人にきちんと連絡をとることができます。
連絡のタイミングや方法(電話、郵送、メールなど)も指定可能です。自分の代わりに最後の挨拶や報告をしてもらえるという点で、大きな安心につながります。
ペットの引き継ぎ先の指定
ペットと暮らしている方にとって、自分が亡くなった後に大切な命をどう守るかは大きな心配のひとつです。犬や猫などのペットには法的な相続制度がなく、遺されたあとに引き取り手がいなければ、保健所に引き渡されたり、最悪の場合は命を落としてしまうケースもあります。
契約の中で、自分が亡くなった後にペットを託したい相手(知人、家族、団体など)をあらかじめ決めておくことができます。
死後事務委任契約で依頼できないこと
次に、死後事務委任契約で依頼できないことを解説していきます。死後事務委任契約は便利な仕組みですが、すべての事務が任せられるわけではない点に注意が必要です。
- 財産に関する手続き
- 生前に発生する手続き
財産に関する手続き
死後事務委任契約では、火葬や納骨などの死後の事務手続きは依頼できますが、財産に関する相続手続きは対象外です。
たとえば、相続人の指定や財産の分け方などの希望を実現するには、「遺言書」を作成しておく必要があります。遺言書があれば、法定相続人はその内容に従って財産の相続手続きを行います。一方で遺言書がない場合には、法定相続人同士による遺産分割協議を経て相続が行われます。
また、ここでいう財産には、被相続人名義の銀行口座や不動産なども含まれます。そのため、銀行口座の解約(預金の払い戻し)や、不動産の売却といった手続きは、死後事務委任契約では行えません。これらは原則として、相続人または遺言で指定された相続人の役割になります。
財産に関する意思を明確に残したい場合は、死後事務委任契約とは別に、遺言書の作成も併せて検討しておくと安心です。
生前に発生する手続き
生きている間の生活支援や財産管理、医療や介護の手配といった内容は対象外となります。
たとえば、日常生活の見守り、病院の付き添い、介護サービスの手続き、口座の管理などは死後事務委任契約では依頼できません。こうした生前の支援を必要とする場合には、「任意後見契約」などの別の制度を利用する必要があります。
任意後見制度を利用すれば、判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ信頼できる人に財産管理や生活支援を委任できる仕組みを整えることができます。死後のことだけでなく、生前の暮らしも安心して任せられる体制を整えたいという方には、死後事務委任契約と併せて検討しておくのがおすすめです。
死後事務委任契約と遺言執行と任意後見制度との違い
ここまで話を聞いていると一度は聞いたことある「遺言執行」や「任意後見制度」に似ている制度だと思う方もいるのではないでしょうか?
死後事務委任契約と遺言執行と任意後見制度との違いについて解説します。
遺言執行との違い
死後事務委任契約では、火葬や納骨などの死後の事務手続きは依頼できますが、財産に関する相続手続きは対象外です。
一方で、遺言とは主に財産の承継(相続)に関する希望を記したものです。遺言執行者はその内容に基づき、財産の名義変更や分配など、相続に関する事務を行うことが役割です。
任意後見制度との違い
死後事務委任契約では、生きている間の生活支援や財産管理、医療や介護の手配といった内容は対象外です。
一方、任意後見契約(任意後見制度)は認知症などで判断能力が低下したときに備えて財産管理や身の回りの事務を任せる契約ですが、本人が亡くなると効力が終了してしまいます。したがって、任意後見契約を結んで老後の財産管理等を託している場合でも、亡くなった後の事務手続きは別途死後事務委任契約で手当てしておく必要があります。
また、任意後見契約は委任契約の一種であり、正式に契約を結ぶには公証役場で「公正証書」を作成する必要があります。口頭や私的な書面だけでは効力が認められないため、必ず公証人の立ち会いのもとで契約を交わすことが求められます。
「高齢者終身サポート事業者」という新しい選択肢
最近では、こうした死後事務を含めた支援を行う 高齢者終身サポート事業者 が全国で増えています。
2023年には国が「高齢者終身サポート事業者ガイドライン」を定め、事業の在り方や信頼性の確保が明文化されました。
厚生労働省にて、わかりやすく要点がまとめられています。

この仕組みを利用すれば、家族に頼らずとも、
- 火葬・納骨を確実に行ってもらえる
- 財産や遺品の整理も安心して任せられる
- 最期まで自分らしく暮らす準備ができる
といった“生前から死後までの一貫したサポート”を受けられます。
死後事務委任契約をどこに頼むか?
死後事務委任契約をどこに頼むか?悩む方がいるかもしれません。基本的に「受任者」となる相手に特別な資格や地位が必要なわけではありません。ただし、契約などの法律行為ができない人(たとえば認知症の方や判断能力が著しく低下している方)は、受任者になることができません。
受任者としてよく選ばれるのは、相続人以外の親族や友人、内縁のパートナー、信頼できる知人などです。また、行政書士や司法書士、弁護士などの専門家や、死後事務に対応している民間事業者を受任者として契約することも可能です。
なお、相続人(親や子など)と契約を結ぶことも法的には可能ですが、実際には、相続人はもともと死後の手続きを行う立場にあるため、改めて契約を結ぶケースはあまり多くありません。
任せたい内容が専門的だったり、金銭管理や住居の原状回復などに関わるものであれば、経験豊富な事業者に依頼するほうが安心なこともあります。誰に何をお願いするかを明確にし、契約前に信頼性や対応範囲をしっかり確認しておくことが大切です。
相続人以外に依頼する時の流れ
相続人以外に依頼する時の流れを整理します。契約を確実に機能させるには、適切な手順で正式な契約書を交わすことが大切です。
- 委任内容を決め見積もりを取る
- 必要な書類を揃える
- 契約書を作成する
- 公正証書にする
まずは依頼したい内容を具体的にリストアップし、それにふさわしい受任者(引き受け先)を決めます。依頼内容と相手が決まったら、両者の合意のもとで契約書を作成します。
特に、公証人役場で公正証書として契約を残す方法がおすすめです。公正証書にすれば契約の信頼性が高まり、本人死亡後に第三者から契約自体を疑問視されるリスクも低くできます。
契約書には依頼事項の詳細だけでなく、解除条件や報酬についても明記し、後々のトラブル防止に備えましょう。
死後事務委任契約の費用相場
死後事務委任契約の費用相場を整理します。一般的に契約締結時の費用や、サービス実行のための費用(報酬)が発生します。契約内容や依頼先にもよりますが、費用相場は数十万円から100万円以上になるケースもあり、決して小さくない負担です。
主に発生する費用
- 死後事務委任契約書の作成
- 死後事務委任の報酬
- 公証役場の手数料
- 入会金、年会費
- 預託金
依頼する法人・団体によっては入会金や年会費が必要な場合や、生前に葬儀費用・清算費用の預託金を預けておくケースもあります。
預託金とは、死後事務を行う際に発生する費用の概算を生前に見積もっておいて、受任者に対してあらかじめ預けておくお金のことをいいます。
いずれにせよ、事前に資金計画を立てて安心して任せられる体制を整えておくことが大切です。
死後事務委任契約の注意点
「誰に任せるか」は死後事務委任契約の最重要ポイントと言えます。受任者(あなたの死後の手続きを請け負う人)は家族や友人でも、弁護士・司法書士等の専門家でも、民間の身元保証サービス事業者でも構いません。
身近に信頼できる人がいるなら無償でお願いすることも可能ですし、遠慮がある場合や確実な遂行を望む場合は有償で専門家に依頼する選択肢もあります。依頼先を選ぶ際は、信頼性と契約内容の明確さをしっかり確認しましょう。
近年は全国で多くの民間事業者(身元保証・死後事務代行サービス)が参入していますが、中には契約内容が不明瞭だったり不適切な条件を提示する業者も存在したため、国は「高齢者終身サポート事業者ガイドライン」を策定して事業者の適正運営基準を示しました。
具体的には「契約内容を分かりやすく説明しているか」「費用やサービス範囲が明確か」「緊急時対応や個人情報管理は万全か」といった点が重視されています。
依頼を検討している事業者があれば、こうした基準に沿った誠実な運営をしているかをチェックすると良いでしょう。もちろん、契約前には疑問点を遠慮なく質問し、納得できるまで説明を受けることが大切です。「この人(会社)に任せて本当に大丈夫か?」という不安を解消してから契約することで、最期を迎えるときの安心感につながります。
「お墓に入ること」だけがゴールではない
「亡くなったらお墓に入る」という考え方も、いまは変わりつつあります。
納骨先の選択肢も広がり、たとえば――
| 海洋散骨 | 海に還るという自然な選択 |
|---|---|
| 樹木葬 | 緑の中に眠る新しいかたち |
| 納骨堂・合祀墓 | 管理の負担を減らしつつ供養できる場所 |
“お墓に入ること”が必ずしもゴールではなく、自分に合った「最期のかたち」を選ぶ時代になってきています。
自分に合った「最期のかたち」を選ぶために ― まずは相談から
家族に頼らずに「自分の最期」を整えることは、決して特別なことではありません。
いまは、信頼できる専門事業者に相談することで、
- 火葬や納骨の手配
- 財産・遺品の整理
- 最期の意思の実現
といった大切なことを、しっかり準備しておける時代です。
「亡くなった後どうなるか」を考えるのは勇気がいりますが、それは“終わりの準備”ではなく、“安心して生きるための準備”でもあります。
まずは、気軽に相談するところから始めてみましょう。
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