相続対策と聞くと、 多くの方がまず思い浮かべるのは、
- 遺言書の作成
- 相続税の節税対策
- 家族信託や生命保険の活用
といった「制度」や「金融的な対策」ではないでしょうか。もちろん、これらは非常に重要です。 しかし、これらと同等に且つ効果の高い相続対策、それが土地の測量・境界確定です。
実務の現場では、
「測量さえ終わっていれば、ここまで揉めなかった」
「測量が終わっていないせいで、売却も分割も進まない」
こうした声を、数えきれないほど耳にします。なぜ測量が、ここまで相続対策として重要なのか。
その理由は、大きく4つのメリットがあります。
測量が相続対策になる4つのメリット
- 土地の売却がスムーズにできる
- 隣地立会が比較的スムーズに進む
- 測量費を相続財産から支出できる
- 相続税の土地評価の基礎資料になる
測量が相続対策になる4つのメリットについて、実務の視点からそれぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット1:土地の売却がスムーズにできる
1つ目のメリットは、「土地の売却がスムーズにできる」です。
相続税の申告・納付期限は、 相続開始から10か月以内です。しかも原則は、 現金一括払い。つまり、 相続財産に不動産が多く、現金が少ない場合、 「売却して納税資金を確保する」ことが前提になるケースも珍しくありません。ここで問題になるのが「時間」です。
仮に、 四十九日が終わってから本格的に動き出した場合、 実質的に使える期間は約8か月。一方で、測量の現状はどうでしょうか。
- 官民境界確定(官民査定)の長期化
- 自治体対応の地域差
こうした要因により、 測量の標準処理期間は確実に延びています。
特に官民査定が絡む場合、 現在では 4か月程度を想定しておくのが安全です。
しかもこれは、 「隣地所有者全員と問題なく連絡が取れ、合意が得られた場合」に限った話です。
実際には、 様々な要因で測量が止まってしまうケースが非常に多いのが現実です。
- 相続で所有者が変わっており連絡先が不明
- 高齢・入院・施設入所で立会が難しい
- 境界認識が食い違っている
結果として、下記のようなトラブルが実際に起きています。
- 引渡し時期が延びる
- 買主の融資期限に間に合わない
- 最悪、契約解除になる
仮に測量が順調に完了したとしても、 残された時間は約4か月。
その間に、買主探し、売買条件の調整、遺産分割協議を並行して進めなければなりません。冷静に考えて、 精神的・実務的にかなり厳しいスケジュールです。
だからこそ、 生前のうちに測量と境界確定を終えておくこと自体が、立派な相続対策になります。
今すぐ売らなくても、 「いつでも売れる状態」にしておくことは、 財産を守ることに直結します。いずれやることが決まっているのであれば、時間にゆとりがある時にやっておきましょう。
メリット2:隣地立会・境界確認がスムーズにできる
2つ目のメリットは、「隣地立会・境界確認がスムーズにできる」です。
測量実務において、 最大の山場は「隣地立会」です。境界確定は、 測量士だけで完結するものではありません。
隣地所有者の協力が不可欠です。ここで生前測量が効いてきます。
被相続人本人は、
- 長年その土地に住んでいる
- 近隣と顔見知り
- 日常的な関係性がある
というケースがほとんどです。
そのため、「ちょっと測量で立会をお願いしたいんだけど…」という一言が、 非常に重みを持ちます。
一方、相続後はどうでしょうか。
- 突然、見知らぬ相続人から連絡が来る
- 「売却のため」と聞いて警戒される
- 関係性がゼロからのスタート
人間関係の観点からも、 立会のハードルは一気に上がります。もちろん、 過去の境界トラブルや感情的なしこりがある場合には、 相続後の方が話が進むケースもあります。
しかし、一般論としては、 生前の方が立会は圧倒的にスムーズです。これは制度の問題ではなく、「人の心理」の問題です。
メリット3:測量費を相続財産から支出できる
3つ目のメリットは、「測量費を相続財産から支出できる」です。
土地の測量には数十万~100万円超の費用がかかることも珍しくありません。しかし、生前に測量を行えば、 その費用は 被相続人本人の支出として処理できます。
- 現預金が減る
- 相続財産総額が減る
- 相続税の課税ベースが下がる
という効果が生じます。相続後に相続人が負担すると、 単なる「持ち出し」ですが、 生前であれば合理的な資産整理になります。
特に、将来的に売却が見込まれる土地や細長い・複雑な形状で分けにくい土地、兄弟姉妹で共有になりそうな土地については、 測量を先送りするメリットはほぼありません。
メリット4:相続税の土地評価の基礎資料になる
4つ目のメリットは、「相続税の土地評価の基礎資料になる」です。
測量図があることで、 相続税評価において次のような点が明確になります。
- 正確な地積
- 不整形地の形状
- 間口・奥行の実態
これにより、不整形地補正などを、より適切に適用できます。測量図がない場合、 評価はどうしても「簡易的」になりがちです。
結果として、本来下げられた評価が下がらない、不必要に高い評価で申告してしまうリスクがあります。
仮に、 測量を行うことで相続税が100万円下がるとしたら、 測量費用を差し引いても、十分に意味があります。必須ではありませんが、 あると非常に強力な武器になる資料です。
測量は「地味だが最強の相続対策」
近年、高齢化による社会構造の変化により、 境界立会は確実に難しくなっています。その影響は、すでに不動産売買や相続実務の現場にはっきりと表れています。
だからこそ、
備えあれば憂いなし
測量は相続対策の第一歩
なのです。
派手さはありませんが、 これほど確実に“効く”対策は、実は多くありません。



