【有価証券 応用編】年末&相続対策に効く、“簿価替え”の考え方

【有価証券 応用編】年末&相続対策に効く、“簿価替え”の考え

12月は年末調整の季節。有価証券の損益も1年分の総決算です。
「今年はプラス? マイナス?」と口座をのぞいたその瞬間こそ、実はいちばん税金と将来の手取りに差がつく設計タイミングでもあります。

多くの人は、いま払う税金だけを見て判断します。
しかし、簿価(取得価格)をどう扱うかによっては、将来の売却時や相続後に「思ったより手元に残らない」という事態も起こり得ます。

今回は、証券リテール営業の経験をもとに、簿価替え × 損益通算という考え方を、年末対策だけでなく相続まで見据えた資産の“整え方”として、具体的な事例(物語)を交えながらやさしく解説します。

不安を安心に変える相続コンサルタント「とうやま」です。証券会社でリテール営業を経験後、相続・不動産専門の税理士法人で相続コンサルタントとして従事。
保有資格はAFP、上級相続診断士、宅地建物取引士、J-REC不動産実務検定1級、2級。
金融×税務×不動産の経験を武器に、フットワーク軽くお悩み解決のお手伝いをしています。仕事のモットーは「聞く聴く訊く→応える」。「何が悩みかもわからない…」「何から相談すればいいか分からない…」といったお話から、丁寧にサポートしていきます。

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目次

簿価替えとは、簿価を“今の時価”に付け替える方法

簿価替え」とは、保有している株式や投資信託などを一旦売却して損益を確定し、翌営業日以降に買い戻すことで取得価額(簿価)を現在の価格に付け替える手法です。

簡単に言えば、売って→買い直すことで、その資産の帳簿上の取得価格をリセットし、評価額を“簿価”(取得原価)から“時価”に更新することを目的としています。

個人の株式投資では、実際に売買という取引を行わない限り帳簿価格(簿価)は変わりません。そのため、簿価替え=実際に売却・再購入して簿価を変更する行為となります。

  1. 今年の利益と損失を相殺(損益通算)して、税負担を平準化
  2. 将来の売却益(=将来の税)が重くなりすぎないよう、簿価を整える

※譲渡税を計算する特定口座の特性上、同じ営業日に「売って→買う」と、多くの証券会社で「買い→売り」扱いになり簿価が平均化されます。狙い通りにするなら“翌営業日以降の買い戻し”が無難です(取引ルールは証券会社で異なります)。

物語①:田中さんの“年末100万円調整”(損出し)

田中さんは今年、すでに+200万円の実現益。今後も持ちたい優良株Bが−100万円の含み損…。

「売る気はないけど、今年の税金は軽くしたい…」

年内にBをいったん売却(−100万円確定)→翌営業日以降に買い戻し。
今年の課税対象は 200 − 100 = 100万円 に。税率20.315%なら約20万円で済み、何もしなければ約40万円

しかもBは簿価が現在値に更新され、将来の税も軽くなりやすい。

投資としての保有は続けたまま、税だけ整えた事例です。

含み損を活用する「損出し」 年末の損益通算で節税

損出し」とは、評価損(含み損)が出ている株式等をいったん売却して損失を確定することで、同じ年の他の譲渡益と相殺して税負担を軽減する手法です。

単なる「損切り」(損失確定後に資産を手放す)と異なり、損出しでは売却後に同じ銘柄を買い戻すため、資産の保有は継続したまま税金だけを調整できます。

同一年度内の上場株式等の譲渡損益は損益通算が可能です。株式、投資信託、ETF、REITなど課税口座での譲渡益と譲渡損は自由に相殺できます。(ただしNISA口座の損益とは通算不可)配当の扱いは申告方法の選び方で変わります。

また、当年中に控除しきれない損失は確定申告を行うことで最長3年間の繰越控除が可能です。(毎年確定申告が必要)

物語②:繰越損を“お掃除”する益出し

佐藤さんは過去の相場で−300万円の繰越損。
今年はA銘柄が+200万円の含み益。

「どうせなら“無税”で利益を確定したい!」

Aをいったん売却(+200万円確定)→翌営業日以降に買い戻し。
繰越損300万円で+200万円を全額相殺でき、今年の税は0。さらにAの簿価が現在値に上がり、将来の課税も重くなりにくい。

“損で部屋を片づけ、益で空いたスペースを埋める”イメージです。

繰越損失を活用する「益出し」 繰り越した損と利益を相殺

「益出し」とは、含み益のある資産をあえて売却して利益を実現させ、その利益を過去の繰越損失で相殺することを指します。

過去に株式等の譲渡で大きな損失を出し、確定申告によって損失の繰越控除(最長3年)を行っている場合、翌年以降の譲渡益はその繰越損と相殺して課税ゼロにできる可能性があります。

この制度を有効活用して「無税」で利益確定するのが益出しの狙いです。

益出しのメリット:

  • 繰越損失の有効活用
    • 繰越中の損失がある場合、含み益のある資産を売却して利益を出しても非課税で利益確定できます。せっかくの損失控除枠を使わず終わらせるより、有望な資産の利益を一部実現してでも使い切った方が税務上有利になるケースがあります。
  • 簿価の引き上げ
    • 繰越損で利益を相殺できるうちに含み益資産の簿価を高くしておけば、繰越期間終了後や将来売却時の課税対象額を減らせます。大きな含み益を抱えたまま相続に至ると、相続人が売却時に思わぬ税負担を負う恐れがありますが、被相続人のうちに益出しで簿価を上げておけばそうしたリスクも低減できます。
  • 益出しを検討すべきケース
    • 繰越損失があり、今年の実現損益がプラスの場合です。繰越損が十分に残っているなら、含み益のある資産を売却して「損失の繰越+当年益」で損益ゼロにできる可能性があります。
    • ただし、今年すでに損失超過(実現損益がマイナス)で繰越損もない場合、無理に益出しをする必要はありません。その年は課税される利益がないわけですから、含み益資産は保有を続けても問題ありません。逆に実現益がプラスで繰越損もない場合は、先述の損出し(含み損の実現)による節税を検討すべきでしょう。自分の損益状況と繰越控除の残高を把握した上で、「損出し」か「益出し」か最適な方法を選択することが重要です。

物語③:長期優待の“時計”、ゼロに戻さないで!

小林さんは3年保有で優待がグレードアップする人気銘柄Cを保有。
今は2年目、あと1年でカタログが倍になる予定。

「年末に−100万円の損出しをして+200万円と相殺。翌営業日以降に買い戻せばOK?」

ここで落とし穴。優待の中には「株主名簿に“同一株主番号”で連続◯回記載」といった“連続保有”基準で長期優待といった条件のものも存在します。

いったん売却すると名簿から離脱。翌営業日以降に買い戻しても“長期の時計がリセット”されることがあります。

  • 来年の長期ランクに届かず通常ランク
  • “あと1年”が“また1年目”に逆戻り

結果として翌年以降に長期保有特典を受け取れなくなる恐れがあります。

要注意! 長期保有特典がある優待株の簿価替え

株主優待狙いで長期保有している銘柄については、簿価替え(損出し・益出し)を行うことで長期保有認定がリセットされる可能性に注意しましょう。

多くの企業の株主優待では、「◯年以上継続保有」でもらえる特典が設定されています。この継続保有期間は通常「株主名簿に同一株主番号で連続◯回記載」といった条件で判定されます。一度すべて売却してしまうと株主番号が変更され、名簿上は保有期間がゼロから再スタートになってしまいます。

長期優待株で損益調整するコツ

  • 優待重視の銘柄は極力触らない:含み損があっても、長期保有特典の権利取り途中の銘柄は簿価替えの対象から外すのが無難です。
  • 優待判定後に検討:長期優待が確定する権利確定日を通過してから(保有期間カウントがリセットされても被害が少ないタイミングまで)別の年に損益通算を図る方法もあります。
  • 他の銘柄で代替:無理に優待株で損出しせず、他の銘柄の損益で通算することで対応する。どうしても同じ株で節税したい場合は、権利確定後かつ株主番号が変わらない範囲(全部ではなく一部だけ売却する等)で工夫する手もありますが、リスクを伴うため慎重に。
  • 株主番号が変わる行為に注意:売却以外にも、証券会社をまたいだ株の移管や名義変更・住所変更、貸株サービスの利用などでも株主番号が変わり継続保有扱いが途切れる可能性があります。長期優待を狙う場合はこうした手続きにも配慮が必要です。

相続での事例:「1,000万円の株」が“争族”の火種に?

年末のイベントと思われがちな簿価替え、実はぜひ”争族”対策としても検討いただきたいテクニックです。山本様の事例でご説明いたします。

山本家のお父さまが昔100万円で買った株。いまや評価は1,000万円
相続後、納税や生活資金のために売ろうとすると、含み益は 1,000 − 100 = 900万円
ざっくり税金は約180万円(20.315%想定)。手取りは約820万円に...

「1,000万円だと思ってたのに、売ったら820万円!? 不公平じゃない?」

こうした“額面と手取りのギャップ”が、兄弟間の不信や“争族”の火種に。
生前の手当として、もしお父さま側に繰越損や当年の利益があるなら、いったん益出し→翌営業日以降で買い戻しで簿価を引き上げておく設計が有効でした。

「資産はいくらか」だけでなく「売ったらいくら残るか」まで見据えた損益の棚卸しが、争いを防ぐ最初の一手になります。

相続した株式を売却する際の税優遇

相続により取得した上場株式等を、相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却した場合、取得費加算の特例を適用できます。これは相続で納めた相続税の一部を売却益の取得費に上乗せできる制度で、相続財産を売却する際の譲渡所得税を軽減する措置です。

引用:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

ただし適用には相続税申告を期限内に行っている等の条件があります。

この特例を使えば、簿価替えできなかった場合でも相続人側で譲渡税負担を和らげられる可能性があります。相続発生後に大きな含み益資産を売る際は、税理士や専門家に相談してみましょう。

【有価証券応用編】12月&相続対策の“やることリスト”

◻︎年間損益の棚卸し

まず今年1年の確定損益を確認しましょう。譲渡益はいくら出ているか、譲渡損はいくらか、未実現の含み益・含み損はどれだけあるか、そして過去からの繰越損失の残高はあるか。これらを洗い出し、全体像を把握します。

◻︎通算プランの作成

次に、どの利益とどの損失を相殺するか計画を立てます。銘柄単位で「A株の益とB株の損をぶつける」「繰越損○○万円と今年の益△△万円を相殺する」など、具体的にシミュレーションします(配当金の扱いも、この段階で総合課税で通算するか等方針を検討してメモしておきます)。

◻︎簿価替え候補の選定

損益通算プランに沿って、実際に売買する銘柄を決めます。【損出し候補】=「今後も保有したいが含み損を抱えている銘柄」、【益出し候補】=「繰越損で吸収できる含み益を抱えている銘柄」といった具合です。優待狙いの長期保有株など触らない方が良い銘柄はここで除外します(前述の優待株の注意点を参照)。

◻︎売買スケジュールの確認

年内計上に間に合う最終売買日をチェックしましょう。日本株の場合、その年の最終取引日は通常12月最終週の平日です(例えば2025年は12月26日が最終受渡日)。この日までに売却約定すれば当年分に計上されます。

また、翌営業日以降の買い戻しルールは証券会社によって微妙に異なるため、特定口座の扱いや約定日ベースか受渡日ベースかなど気になる場合は事前に証券会社に確認すると安心です。

引用:権利確定日一覧(みんかぶ)

◻︎確定申告の準備・設計

年度をまたぐ損失繰越を継続利用する場合、毎年の確定申告が必要です。忘れずに申告しましょう。また、配当所得を損益通算するか(総合課税を選ぶか)や、取得費加算の特例の適用など、有利な申告方法を事前に検討します。

NISA枠で保有している分は通算対象外であること、貸株サービスや他社への口座移管、名義変更等がある場合は長期保有優遇への影響もチェックしておきます。

簿価替えで賢く資産管理&円満相続を目指そう

簿価替えは“節税の小技”ではなく、資産全体の税負担をならし、将来のために備える「整え方」です。今年の譲渡益と譲渡損をしっかり損益通算し、繰越損失があれば最大限活用する。そして必要に応じて翌営業日以降の買い戻しで“今のうちに払う税”と“将来払う税”のバランスを心地よく調整する。これが簿価替えの真髄です。

ただし株主優待の「長期保有カウント」だけは壊さないよう十分配慮しましょう。それさえ気を付ければ、簿価替えで大きな失敗をするリスクは格段に下がります。含み損や含み益を抱えた資産をそのまま放置せず、「売ったらいくら残るか」まで見据えて棚卸しすることが、余計な税金を払いすぎないだけでなく、将来の争いを防ぐ一手にもなります。

うちの場合はどうだろう?」と感じたら、年末がもっとも効果的なタイミングです。この機会にぜひ一度専門家にご相談ください。

当社では税理士法人や相続のプロとも連携し、お客様の状況に合わせた最適な簿価替えプランをサポートいたします。資産運用と相続対策の両面から、皆様の大切な資産を守るお手伝いをいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

注:本稿は制度の概要説明です。実際の取り扱い・税額は口座区分、所得状況、証券会社のルール等で変わります。最終判断は最新の制度・IRをご確認のうえで。

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この記事を書いた人

不安を安心に変える相続コンサルタント「とうやま」です。証券会社でリテール営業を経験後、相続・不動産専門の税理士法人で相続コンサルタントとして従事。
保有資格はAFP、上級相続診断士、宅地建物取引士、J-REC不動産実務検定1級、2級。
金融×税務×不動産の経験を武器に、フットワーク軽くお悩み解決のお手伝いをしています。仕事のモットーは「聞く聴く訊く→応える」。「何が悩みかもわからない…」「何から相談すればいいか分からない…」といったお話から、丁寧にサポートしていきます。

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