住宅確保要配慮者の“住まいの不安定化”が、オーナーの資産経営にも影響を及ぼす時代へ
高齢者、障害のある方、ひとり親世帯、生活に困りごとを抱える世帯、外国籍住民など——
いわゆる住宅確保要配慮者が民間賃貸住宅へ入居しづらくなっている状況が、年々強まっています。
賃貸オーナーにとっては、孤独死・家賃滞納・近隣トラブルといった管理リスクは避けたいものですが、こうした不安が空室率に影響していることも事実です。
住まいが安定しない状況は、入居者本人だけではなく、医療・介護・福祉へつながりにくい構造をつくり、地域での暮らしの基盤を揺るがす要因にもなります。
こうした現状を踏まえ、令和7年10月1日に施行されたのが、
「住宅確保要配慮者に係る賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)」の改正です。
この法改正は、住宅確保要配慮者の住まいの安定を図るための枠組みを見直し、その実効性を高めようとするものです。
これは、不動産オーナーにとっても “資産の守り方” に新たな視点をもたらします。
“住まい”の課題を解決する住宅セーフティネットの法改正
2040年問題、所有リスクの増大、そして“住まい”をめぐる課題の複雑化
日本ではすでに、人口減少・単身高齢者の急増・空き家の増加という複数の課題が同時進行しています。
特に2040年前後を見据えると、独居高齢者の増加、社会資源の不足、地域包括ケアシステム、介護保険制度の逼迫など、
“住まい”を取り巻く課題がより複雑に絡み合うと予測されています。
一方で民間賃貸市場では、下記のような現象が広がっています。
- 孤独死・家賃滞納・トラブルによる管理負担の増加
- それによる住宅確保要配慮者の入居をためらう傾向と空室の増加
- 所有者不明不動産・空き家の管理コスト増加
つまり、「貸しにくい人が増えている」そして「貸せない物件も増えている」
この両軸が同時に進行しているのです。
このように“住まい”の問題は、多分野が重なる領域に移行しており、住宅セーフティネットの法改正も、こうした環境変化を背景に進められています。
住宅セーフティネット法とは?
住宅セーフティネット法とは何を目的としているのでしょうか。2007年に制定され、2017年の改正で本格化しました。歴史を振り返っていきましょう。
住宅セーフィティネットの目的
経済産業省では以下のように目的を取りまとめられています。
住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭、その他住宅の確保に特に配慮を要する者)に対する賃貸住宅の供給の促進に関する施策の基本となる事項等を定めることにより、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進を図り、国民生活の安定向上と社会福祉の増進に寄与することを目的としています。
平成29年7月 新たな住宅セーフティネット制度
つまりは、住宅確保要配慮者が安心して、円滑に住まいを見つけられる環境を整えることが目的としています。
住宅確保要配慮者の中には、外国人も含まれており、自治体によっては新婚世代を含まれていたりと判断が委ねられております。
2017年の住宅セーフティネット法改正
2017年10月25日には改正法が施行され、新たな制度が加わりました。この改正では、空き家・空き室に悩む家主に対して財政支援策が盛り込まれていることも大きな特徴です。
1. 住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度
都道府県や市区町村が策定する「住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の供給促進計画」に基づき、賃貸人(オーナー)が住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を「登録住宅」として申請・登録する制度です。登録先は、都道府県、政令指定都市、中核市が窓口となりました。
登録には、住宅の規模、構造、設備などが基準を満たしていることが条件となり、シェアハウスなどの共同居住型住宅も、「共同居住型住宅基準」に適合していれば登録可能となった。
2. 登録住宅の改修・入居者への経済的支援
登録住宅に対しては、国や自治体からの支援があります。主に以下のような内容です。
- 改修費の補助:住宅確保要配慮者専用住宅とする場合に、用途変更(例:共同住宅への転用)、耐震補強、バリアフリー改修などの工事が補助対象となります。
- 融資制度の活用:住宅金融支援機構による融資が利用でき、改修工事費用の最大8割まで融資を受けることが可能です。
- 入居負担の軽減:低額所得者が安心して入居できるよう、家賃や家賃債務保証料の一部について、国および地方公共団体から補助が行われる場合があります。
3. 住宅確保要配慮者の入居支援体制
これまでの「居住支援協議会」は法人格がないため、継続的かつ実務的な支援活動に限界がありました。
この課題に対応するため、法改正によって、入居支援の中心となる「居住支援法人」を都道府県が正式に指定できるようになりました。これにより、居住支援活動の体制が大きく強化された。
さらに、入居支援を行っているNPOや社会福祉法人に加え、関連業務を行っている企業も指定法人になることができます。
指定された法人は、登録住宅の情報提供や入居相談、住宅確保要配慮者に対する家賃債務保証などを行っていった。
また、生活保護を受けている人の民間賃貸住宅への入居を進めるため、家賃支払いを本人に代わり福祉事務所 が賃貸人に直接行う「代理納付」を推進し、賃貸人の情報提供に基づいて福祉事務所が事実確認と代理納付の要否を判断できる手続きが整備されました。
住宅セーフティネット 法改正のポイント
今回の2025年住宅セーフティネット法改正および、それに関連して進められている居住支援策の見直しでは、おおまかに次のような方向性が示されています。
オーナーの方も、ぜひ知っておきたい構造変化になります。
- 登録住宅に関する枠組みの見直し(法+制度運用)
- 居住支援法人の役割の明確化(法+省令・通知)
- 経済的支援体制の整備・充実(制度全体として)
- 市区町村の体制整備(いわゆるPDCA)
- 住まいと生活支援を一体で考える流れ
登録住宅に関する枠組みの見直し(法+制度運用)
- 住宅セーフティネット法に基づく 「セーフティネット住宅(登録住宅)」の位置づけの明確化
- 面積・設備・管理水準などの基準を整理し、長期的な利用を前提とした住宅として扱う方向性
- これに合わせて、登録住宅を活用した支援メニュー(改修費補助・家賃低廉化支援など)の運用見直し
※補助制度そのものは法の条文というより、法律に基づく予算措置・制度運用として整備されている領域です。
居住支援法人の役割の明確化(法+省令・通知)
- 法律上の位置づけに加え、関連する省令や通知により
入居前の相談支援〜入居中の見守り〜福祉サービスとの連携 など、担う役割が整理されつつあります。 - オーナーにとっては、居住支援法人が関与することで、リスク管理と支援体制をセットで考えやすくなります
居住サポート住宅では、ICT(センターやスマートメーター、IoT家電など)で異常を検知して安否確認を行なったり、1ヶ月に1回以上の訪問、気軽に相談できる相談窓口を設けるというサポートを受けられます。

経済的支援体制の整備・充実(制度全体として)
- セーフティネット住宅への改修費補助や家賃低廉化支援
- 家賃債務保証の活用促進
- 生活保護の住宅扶助の代理納付など、他制度とも連動した仕組みの整備
利用しやすい制度を目的として、家賃債務保証を原則断らないようにし、契約の際の緊急連絡先には親族等の個人に限定せず、法人でも可能となりました。おひとりさまに配慮した制度設計と言えます。
また、認定家賃債務保証業者は、独立行政法人住宅金融支援機構(JHF)の家賃債務保証保険を利用でき、保険の対象範囲と保険割合が拡充されています。
市区町村の体制整備(いわゆるPDCA)
- 法律上、市区町村の責務や役割が位置づけられたうえで、各自治体において 居住支援協議会の設置・運営や、相談〜退去まで切れ目ない支援体制の構築 が求められています。
- これは、法改正とあわせて示されている国の基本方針や通知等に基づく運用上の方向性です。
入居者の死亡後、残置物が処理できず、次の人に貸せない状態が続いていました。そうした問題を解決できるように、居住支援法人の業務に残置物処理を追加することで、入居者の相続人などの代わりに居住支援法人が残置物の処理を行います。
住まいと生活支援を一体で考える流れ
- 住宅セーフティネット法を軸にしつつも、介護保険、生活困窮者自立支援、地域包括ケアシステムや介護保険制度など他制度と連動させて、
「住宅確保」と「福祉的支援」を別々にしない 方向で調整が進んでいます。
今回の見直しは、単なる支援策の強化ではなく、住宅確保要配慮者の住まいを地域全体で支えるために、民間賃貸を制度的に組み込む再設計 と捉えることができます。
不動産オーナーにとっての影響
空室対策・収益安定・リスク調整の新しい選択肢
住宅セーフティネット法の改正や関連制度の見直しは、不動産オーナーの資産経営に次のような影響をもたらし得ます。
- 孤独死・滞納などのリスクについて、法に基づく枠組み+支援スキーム の中で対応しやすくなる
- 居住支援法人と協働する運用により、空室リスクを抑えつつ安定収益を目指す選択肢が生まれる
- 空き家・築古物件をセーフティネット住宅等として活用することで、新たな利活用の道が開ける
- 住宅確保要配慮者を支えることが、地域課題の解決や地域社会そのものの価値の底上げにもつながる
これらは「補助金が使えて得」というレベルの話ではなく、収益と地域・社会貢献を同時に成立させるための“構造変化” と考えるのが適切です。
住まいを「資産」と「地域の暮らし」の両面から守るために住宅セーフティネット法の改正は、不動産オーナーにとって 「社会課題と収益性を同じ視野で考える時代」 の到来を意味します。
私たちは、住まいをめぐる課題を不動産・相続・福祉が重なり合う領域として捉え、次の3つの視点を大切にしています。
- 住まいを「地域インフラ」として捉える視点
- 所有者の意思と資産の未来を整える視点
- 複雑な課題を“つなぐ”調整力
住まいを「地域インフラ」として捉える視点
孤独死・滞納・トラブルが増えると、住宅確保要配慮者の入居が進みにくくなり、結果として空室の長期化にもつながります。
住まいは単なる“建物”ではなく、暮らしの基盤。
その前提を共有することで、空き家や築古物件への新しい活用策が見えてきます。
所有者の意思と資産の未来を整える視点
相続未登記や所有者不明不動産の問題、空き家の管理コスト増加は、オーナーの資産運用における大きなリスクです。
誰の意思で、どのように残し、どう活かすのか——
その整理が“将来の資産承継トラブル”を未然に防ぎます。
BFコンサルティングでは、オーナーの想いを丁寧に汲み取りながら、将来を見据えた選択肢を一緒に組み立てていきます。
複雑な課題を“つなぐ”調整力
孤独死リスク、滞納、相続未登記、空き家管理——
これらは、単一の専門分野では完結しない課題です。
司法書士、税理士、行政、居住支援法人、ソーシャルワーカー、医療・福祉専門職など、多職種を横断して最適解を組み立てることで、オーナーが迷わず意思決定できる環境を整えます。
※当社の「相続対策最適化計画®」「高齢者支援最適化計画®」は、こうした複合的課題を一体的に整理するための枠組みとして位置付けています。
住まいの安定は、オーナーの資産と地域の未来を同時に守る
住まいが不安定な状態は、入居者の暮らしだけでなく、地域の医療・福祉・コミュニティ全体に影響します。
住宅セーフティネット法の改正と、それに連動して進む居住支援策の見直しは、「住む場所がない」「空室が埋まらない」という課題を、地域とオーナーが 一緒に解いていくための枠組み と言えます。
BFコンサルティングは、不動産・相続・福祉を横断する専門家として、オーナーの資産と地域の暮らしの両方を支える“全体最適”の視点で、これからの時代を捉える賃貸経営を伴走支援していきます。



