不動産売却価格決め方|初心者でも簡単に理解!

不動産売却価格決め方

不動産の売却価格をどうやって決めればよいのかわからずにお悩みではありませんか?

不動産の売買は大きな金額が動くため、価格設定を誤ると売れ残ったり、逆に損をしてしまったりするリスクがあります。

不動産の価格は、基本的には契約自由の原則に基づき、売りたい人と買いたい人の合意形成で価格が決まります。

不動産会社への査定依頼も大切なステップです。

複数の不動産会社から査定価格を取得し、比較することで適正な価格が見えてきます。

この時には、物件の築年数や周辺環境なども考慮しながら価格を設定することがポイントです。

更に、売り主としての希望価格と市場の現実を整合させるための交渉術や価格設定のコツもあります。

最終的には納得のいく価格でスムーズに売却を進めるためには、しっかりとした情報収集と準備が必要です。

このように、不動産の売却価格の決め方には多くの要素が絡んできます。

本記事では、その具体的な方法やコツを分かりやすく解説していきますので、ぜひ続きをご覧ください。

佐賀大学卒業
公共土木設計に10年、測量・登記・開発に16年、不動産実務に13年、相続・後見に11年。
保有資格は土地家屋調査士、測量士、2級建築士、宅地建物取引士、相続対策専門士など他多数。
実務実績は相続相談件数が2,000件、任意後見契約数が300件、不動産売買仲介数が350件など他多数の豊富な実績。
コラムは実務での実体験を交えてわかりやすく解説しています。

トータル50年の実務実績を活かし、現在は不動産で悩む人がいなくなるよう、正しい不動産の知識を広める活動をしています。

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目次

契約自由の原則(私的自治の原則)

私的自治の原則は、個人が自己の意思に基づいて自由に法律行為を行うことができるという原則で、以下の点を含みます。

契約の自由個人や企業は、他者と自由に契約を締結することができ、その内容も自由に決定することができる。
取引の自由市場における取引や商業活動も、個人の意思に基づいて行うことができる。
自己責任自己の意思に基づいて行った行為に対しては、自ら責任を負うことが求められます。

法務省では、契約事由の原則を以下の通りに定めています。

契約自由の原則は,個人と個人の間で結ばれる契約については,国家が干渉せず,それぞれの個人
の意思を尊重するという原則のことを言います。私的自治の原則も,ほぼ同じことを意味しています。
 この契約自由の原則(私的自治の原則)は,個人の自由を尊重し,国家はできるだけ私人同士の関
係に干渉すべきではないという近代法の考え方に基づいています。

法務省「私法と契約」

【注意】

相続税・贈与税の回避のために低廉な価格で売買した場合には、市場価格との差額に贈与税が課せられる場合があります。民法上の契約は成立しても税法で問題となる場合があるので注意が必要です。

どれくらいが適正な価格か解らない...価格指標とは?

隣はこれくらいで売れたらしい...
昔、知合いの知合いがこれくらいで売ってくれと言っていた。
不動産屋から売って欲しいとチラシが頻繁にくる。
路線価は国が保証している金額だ。
買ったときこれくらいだったから、これくらいで売りたい。

実務上、このような声をよく聞きますが、聞きかじった情報だけでは的を射ない事の方が多いのが現実です。

それでは、なぜ不動産の価格はわからないのでしょうか。

不動産は同じものが2つないと言われています。

なので、隣の家とウチの家でも価格が違うこともあります。

角地かどうかでも価格は違いますし、隣でも眺望が違う場合もあります。

建物があるかないかでも違うし、建物の構造や広さやデザインでも違います。

そして、経済情勢や人口動態によっても大きく変化します。

いわゆる、相場と呼ばれるものです。

この相場ですが、これもやはり需要の強さによって決まります。

一物五価

価格の指標として、公的に出されている価格が次の4つです。実勢価格(売却価格)と合わせて、ひとつの物(不動産)に価格が5種類あるため「一物五価」と呼ばれています。

  • 実勢価格(売却価格)
  • 公示地価
  • 基準地標準価格
  • 固定資産税評価額
  • 相続税路線価

それぞれの価格は、その用途によって使い分けます。

実際に売買する際には、実勢価格(売却価格)となりますが、これは売主と買主の合意で決まります。

ただし、これらの公的な指標も価格交渉に影響を及ぼします。

売却価格と価格指標との関係

実勢価格(売却価格)とは売買が成立した価格の事で、指標(評価)は売買を前提としていません。

田舎の負動産で、「評価はつくけど売れない」ような物件の実勢価格(売却価格)は0円もしくはマイナスというケースも出て来ています。

再建築不可などの個別事情により評価額より実勢価格が下回ることも多々あります。

売却価格を知る方法は2つあります

  1. 実際に売ってみる(売却査定)
  2. 不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する

実際に売ってみる

実際に売却相談をすれば、不動産業者から売出価格の提案があります。最近では、一括査定サイトなどもあり不動産の実際の売出価格の提案を受けることができます。

不動産仲介業者の査定書は媒介業務の一部

原則的には、依頼者からの売却希望価格があり、それに反して価格が下がる意見を述べる場合に、根拠明示義務があります。

宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約)

第三十四条の二 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。

 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示

 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額

......

 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約)
よくある勘違い
  • 「査定価格が高いところで売却したい」
  • この会社はいくら、あの会社は査定額が50万円高かった・・・・
  • もっとたくさん査定依頼したら、もっと高い査定額がでる?

よくある勘違いですが、査定額はあくまで売出の提案価格にすぎません

査定額で成約することを保証している会社はないはずです。

買取査定だとその金額で売ることができますが、仲介の査定はあくまで売出提案価格です。

なので、査定額がどこより少し高かったとか、安かったとか、あまり意味がありません。

仲介会社を選ぶポイント

媒介契約欲しさにむやみに高い査定を出したりする会社は、その後の売却方法もかなりゴリゴリのゴリ押しで売り切る傾向にあります。

高く売るのはもちろんですが、査定や売却方法のプロセスを重視し、売主の意向に沿った売却ができるよう安心して話ができる業者に任せるのが良いでしょう。

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する

通常の売買であれば、売主と買主が合意すれば価格は決められますので、鑑定評価まで実施することは稀です。

ただし、実際に売却しない場合。例えば、相続不動産の分割で争っている場合の時価算定のときなどは、実物を売らずに価格を決める必要があります。

売らずに一般流通するであろう市場価格を合理的に算定するのが鑑定評価です。

鑑定評価に係る費用は数十万円から場合によっては100万円を超えるため、調停や税務申告などの精密なエビデンスを要する場合に限って利用されています。

不動産の鑑定評価に関する法律 第2条(定義)

第二条 この法律において「不動産の鑑定評価」とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいう。以下同じ。)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。

 この法律において「不動産鑑定業」とは、自ら行うと他人を使用して行うとを問わず、他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うことをいう。

 この法律において「不動産鑑定業者」とは、第二十四条の規定による登録を受けた者をいう。

不動産の鑑定評価に関する法律 第2条(定義)

「他人の求めに応じ報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うこと」を不動産鑑定業として定義し、規制しています。

不動産業者が媒介業務として価格査定を行うことはありますが、この査定に関して報酬をもらわない限りは不動産鑑定業とはなりません。

不動産の査定方法は3種類

不動産の査定方法は、大きく次の3種類があります。

  • 取引事例比較法
  • 原価法(積算法)
  • 収益還元法

自己利用(実需)不動産については、取引事例比較法が一番多く用いられる手法です。

ただし、建物がある場合には建物部分を原価法(積算法)で計算すると築年数や構造などをより価格に反映させることができます。

一方、賃貸マンション・賃貸アパートなどの収益不動産は、収益還元法で価格を算定します。

取引事例比較法対象となる不動産と類似する過去の取引事例を基に価格を査定する方法 類似物件の成約価格×調整率
原価法(積算法)土地の価格と建物の再建築費用を基に価格を算出する方法 土地(鑑定評価・路線価・公示価格)+建物(再調達原価×減価率)
収益還元法将来得られる収益を基に価格を算出する方法 満室想定賃料÷還元利回り
各種査定方法とその計算式

売り出し価格と成約価格に注意

取引事例比較法では、実際に売りに出された物件の価格をもとに個別調整を行って価格を調整します。

ただし、この売りに出された物件の価格には、実は2種類あります。

それは、売出価格と成約価格です。当初売り出した価格と成約価格は必ずしも一致しません。

それどころか、だいたいの物件は指値といって値下げ交渉の末に成約することの方が多く、売出価格(販売事例)をもとに査定した場合には少し割高になっている可能性があることに注意が必要です。

成約価格はポータルサイトではほとんど見ることはできません。

データ量としては圧倒的に売出価格(販売事例)が圧倒的に多いのです。

不動産業者間の流通サイトであるレインズでは成約事例も見れるので、成約事例と販売事例を総合的に勘案して価格相場を見るのが良いでしょう。

売り出し価格と成約価格の乖離率について

ではその売り出し価格と成約価格はどのくらいの乖離率があるのでしょうか?

乖離率を求める計算式は以下のとおりです。

乖離率(%)=(成約価格 - 売り出し価格)÷ 売り出し価格 × 100

一例として、中古マンションの乖離率を見てみましょう。

東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」によると、新規登録価格(売り出し価格)と成約価格は以下のとおりです。

2024年4月単価(1m²当たり)
売り出し価格73.70
成約価格78.08
乖離率5.6%

不動産の需要を知ることが売却価格を決める上で大切

不動産は同じものは2つとありません。

そのため、売買の際もたくさん情報を出して買主を探しても、最終的に買うのは一人だけです。

当たり前の事ですが、不動産仲介会社はその一人を探すために色々なプロモーションをするわけです。

その方法は、インターネットだったり、口コミだったり、ポスティングだったり、その一人にたどり着く最良の方法を考えます。

そして、購入する買主はその物件を一番有効に使うことのできる人なのです。

だから、一番良い条件で買う買主に選ばれるのです。

売買は、売主と買主との合意形成によって成立します。

最も良い条件を出せるということは、最も効率的な使用方法ができることの証明でもあります。

その使用目的に再現性があればあるほど、不動産の価格は上がります。

価格決定のプロセスにおいて最も重要なのは、「今」この不動産を欲しい人がどれくらいいるか、という時間軸です。

収益還元法の落とし穴

取引事例比較法は、実際の成約事例や販売事例があるので、それは分かりやすい。個別調整のところに人為的な要素が入るのでそこは注意点といえます。

そして、収益還元法は、満室想定賃料を還元利回りで割り戻すだけの単純な計算なのですが、逆に言うと、この満室想定賃料と還元利回りが少し違えば出てくる答えは全く違うものになります。

満室想定賃料がどうなのか?(現行賃料で査定していないか?)

還元利回りっていくら?

仮に満室想定賃料が年間400万円だったとして、利回りが1%違うと価格はいくら違うでしょうか。

400万円 ÷ 6% =6666万円

400万円 ÷ 7% =5714万円

400万円 ÷ 8% =5000万円

400万円 ÷ 9% =4444万円

400万円 ÷ 10% =4000万円

利回りが低くなればなるほど、小さな利回りの変化でも価格は大きく変動します。

そして、この還元利回りを客観的に説明できる人はほとんどいません。

利回りは、地域・駅距離・構造・規模・間取・築年数等により決まります。実需不動産は最有効使用によって価格が決まりますが、収益不動産は買主の期待する利回り(期待利回り)によって価格が決まります。

相続対策などの理由で、利回り重視でない売買も中にはありますが、収益不動産の価格は、満室想定賃料と還元利回りを把握することが重要です。

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